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第126回学術集会(平成25年10月26日(土),27日(日))
【教育セミナー3】
婦人科悪性腫瘍に対する体腔鏡下手術と
ロボット手術について
小阪 謙三
静岡県立総合病院産婦人科
婦人科悪性腫瘍に対する体腔鏡下手術は,1986年にフランスのDargentが経後腹膜的に骨盤リンパ節郭清術を施行して以来,欧米では傍大動脈リンパ節郭清術や広汎子宮全摘術(Piver type 2,3)を含め比較的速やかに普及した.
一方我が国では,手技的な不慣れや根治性への懸念から導入が大変遅れた経緯があるが,近年は急速に普及の気配をみせている.一例として子宮体癌に対する腹腔鏡下根治術が2008年7月に高度先進医療として承認され,その後先進医療として施行する施設が順調に増加しており,2013年7月現在国内27施設で先進医療として行われている.また,現状では限られた一部の施設ではあるが傍大動脈リンパ節郭清術,広汎子宮全摘術などが体腔鏡下に行われており,これらの術式を施行する施設も徐々に増加するものと考えられる.
婦人科領域における医療用ロボットを用いた手術は,歴史的にはまず卵管吻合などに試行され,続いて子宮全摘を行った報告が見られる.Da Vinciサージカルシステムは,ヨーロッパ諸国では1999年,米国では2000年に薬事承認を受けたが,我が国では欧米に遅れること約10年,ようやく2009年に薬事承認を受けるに至った.Da Vinciサージカルシステムを用いたロボット補助下手術は泌尿器科領域では既に保険診療として急速に普及しつつあるが,婦人科領域では本格的な普及のために解決すべき問題が種々あると考えられる.このような状況もあって,諸外国では婦人科悪性腫瘍に対してもロボット補助下手術が普及しているにもかかわらず日本では現在のところ非常に限られた施設でのみ試行されているというのが実状である.しかしながら,ロボット補助下手術は従来の体腔鏡下手術と比較してラーニングカーブが非常に短いという特徴を持っているため,婦人科悪性腫瘍に対する開腹術で優れた技術を持つ多くの医師がより低侵襲に開腹術と同等の根治性を持つ手術療法を行う絶好の機会の到来とも考えられる.その普及は取りも直さず非常に多くの患者さんが恩恵を受けることであると考えられ,安全性が確保された中での一刻も早い普及が望まれるところである.
今回は,主に京都大学医学部附属病院在籍中に行った体腔鏡下の骨盤リンパ節郭清術,傍大動脈リンパ節郭清術,Da Vinciサージカルシステムを用いたロボット補助下広汎子宮全摘術(神経温存術式)について供覧し,これまでの手術成績の紹介,今後の問題点の提起などを行いたいと考えている.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(3)
424-424, 2013
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