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第126回学術集会(平成25年10月26日(土),27日(日))

【ワークショップ1】
自閉症児童にみられる特異的低脂血症


松ア 秀夫
福井大学子どものこころの発達研究センター


 自閉症は小児期に診断される広範性発達障害のひとつである.近年,その有病率は1〜3%と増大の一途をたどっているが,その病因は未だ明らかでなく,生物学的根拠のある診療技法は存在しない.現実的な治療手段として医療者の介入に基づく「療育」が施されており,現場では早期診断・早期介入が最重要課題とされる.特異的な早期診断マーカーを求めて,多くの研究者がその検索に取り組んでいるが,いまだにコンセンサスを得られたものはない.  我々は自閉症の当事者団体であるNPO法人アスペ・エルデの会の協力を得て,自閉症の生物学的診断マーカーを探索する試みを行ってきた.Smith-Lemli-Opitz症候群の約半数が自閉症の症状を呈するとの報告から,自閉症者の脂質代謝に注目し,末梢血中の脂質濃度を測定した.  6歳から32歳までの自閉症者174名・健常者180名を対象として,まず末梢血中のコレステロール・中性脂肪をHPLC法によって測定したところ,総量がともに低下していた.リポタンパク質分画ではVLDL分画,HDL分画の低下が認められ,中でも中性脂肪のVLDL分画成分が自閉症者で著しく低下することが見出された.そこで,中性脂肪VLDLと年齢との相関を調べた結果,自閉症の中性脂肪VLDL分画は年少であるほど健常者と差が大きく,早期スクリーニングツールとして有望であると考えられた(図1).さらに,低年齢層で判別に必要なカットオフ値をROC解析で検索した結果,カットオフ値を30mg/dlに設定すると,8歳以下で感度・特異度いずれも82%を記録し,年少の自閉症者を判別する上で有用であった(図1).広く臨床の現場で利用するためには,HPLC法でなく,医療機関に普及している臨床検査機器で取り扱える必要があるが,この結果は臨床検査薬を用いた測定でも再現できた.  この特異的な低脂血症所見は,自閉症の早期診断マーカーとしての有用性のみならず,自閉症病態研究における脂質代謝の重要性をも示唆するものである.本ワークショップでは,この所見のメカニズム解明と臨床応用に向けた取り組みについて紹介する.  (出願特許)  高機能自閉症の発症危険度を判定する方法およびマーカー  出願人:国立大学法人 浜松医科大学  発明者:森則夫,中村和彦,鈴木勝昭,土屋賢治,岩田圭子,松ア秀夫  国内出願番号:特願2011-536046 国際出願番号:PCT/JP2010/006114  中国特許出願番号:201080046519.3 欧州特許出願番号:10823205.9  米国特許出願番号:13/501147 インド特許出願番号:4139/CHENP/2012 図1


関東連合産科婦人科学会誌, 50(3) 432-432, 2013


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