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第126回学術集会(平成25年10月26日(土),27日(日))

【ワークショップ2】
クリニックにおけるベンチサイド,ベッドサイド 〜地域連携の中で〜


俵 史子
俵IVFクリニック


一人開業医として不妊治療に携わっていると日々の診療に追われがちであるが,そのような中でも,多くの患者と接する環境をチャンスと捉え診療にあたることで,新しいヒントを得られることがある.治療にフィードバックでき,患者に還元できる身近なテーマで,ベンチサイド,ベッドサイドそれぞれから検討を行った. ・ベンチサイドから 子宮頸管因子を評価するヒューナーテストや頸管粘液検査は,バラつきも多く主観に左右されやすい.頸管粘液を定量的に評価することができれば,頸管因子の客観的な評価が可能になると考えられる.不妊における頸管因子の新しいマーカーとして頸管粘液中の顆粒球エラスターゼ(GE)に着目した.GEは浜松医科大学で開発され切迫早産に臨床応用されているが,不妊分野においても利用できないかと考えた.外界からの微生物が進入した際,生体は顆粒球を脱顆粒し活性酸素やGEなどの蛋白分解酵素を放出,進入を防御する.これらの過剰な産生は生体にとって侵襲因子となり悪影響を及ぼす.GEが不妊症検査に有用か検討するため以下の検討を行った.1)正常月経周期におけるGE濃度の変化について.2)ヒューナーテストとGEとの関連.3)クロミフェンクエン酸塩(CC)投与例でのGEの変化.その結果,排卵期でのGEは卵胞期に比べ顕著な低下を示した.ヒューナーテスト不良群では排卵期にGEが低下しない例が存在した.CC投与患者では排卵期GEの低下が抑制された.エラスターゼなどの顆粒球のメディエーターは精子を傷害する可能性があり,排卵期のGEが低下することで,頸管中の精子の通過性を向上させることが考えられた.GE測定は不妊検査における頸管因子の新たな指標になる可能性が示唆された. ・ベッドサイドから ART妊娠における妊娠,分娩時の有害事象について様々な議論がある.我々の施設ではARTで妊娠した児の分娩転帰についてほぼ全例フォローしている.胚盤胞の形態評価が児の状態,妊娠予後,合併症と関連性があるか検討を行った.妊娠成立後に産科施設へアンケートを依頼.分娩後ほぼ100%の回収率で返送してもらいデータを収集した.単一胚盤胞移植を行い妊娠予後が明らかな768症例について,栄養外胚葉TEの評価別に流・早産率,合併症の頻度,出生児の状態を検討した.TE評価と出生体重,身長との間に関連性は認められず,流産率はTE評価の低いものほど高くなった.合併症では,特にTE評価の低いもので癒着胎盤,前置胎盤などの胎盤異常が高い傾向を認めた.近年ART妊娠と胎盤異常の関連が指摘されているが,今回においても頻度は高く,さらに栄養外胚葉の形態不良胚で高まることがわかった.不妊治療施設から産科への転院時には移植胚の形態評価を伝達することが,その後の妊娠・分娩管理に有用な情報となると思われた.妊娠成立後バトンタッチする産科との連携を大切にしながら,今後も更なる検討を行っていきたい.


関東連合産科婦人科学会誌, 50(3) 437-437, 2013


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