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第126回学術集会(平成25年10月26日(土),27日(日))
【若手ポスターセッション1】
腎の挙上および肺葉外肺分画症を合併した先天性横隔膜ヘルニアの一例
吉新 明日香, 叶谷 愛弓, 品川 光子, 小松 篤史, 高木 紀美代, 吉田 志朗
長野県立こども病院産婦人科
出生前に胸腔内への腎脱出を伴う先天性横隔膜ヘルニアと診断し,出生後の術中所見で後腹膜に覆われた腎挙上と肺葉外肺分画症と診断された症例を経験したので,文献的考察とともに報告する.症例は31歳0経妊0経産.自然妊娠し,妊娠36週4日の妊婦健診で横隔膜ヘルニアが疑われ,妊娠36週6日当院に紹介受診となった.初診時の超音波所見で縦隔偏位は認めず,腹部大動脈から心臓の高さまで分岐した左腎動脈及び左腎を認め,左腎の胸腔内脱出が疑われた.肺断面積児頭周囲長比(LHR)は3.25でMRI所見でも肺低形成は疑われなかった.胎児左横隔膜ヘルニアの診断となり,脱出臓器として脾彎曲部結腸と左腎が疑われた.妊娠39週2日陣痛発来し,自然経腟分娩となった.児は3174g,男児,Apgar score 8/9,UApH 7.24で出生.出生直後より新生児集中治療室で呼吸循環管理が行われ日齢1に横隔膜ヘルニア根治術を施行した.術中所見で横隔膜の欠損孔から有嚢性に脾臓と結腸の一部の胸腔内脱出を認め,左横隔膜ヘルニア(Bochdalek hernia)の診断となった.また,横隔膜後壁の欠損部から左腎を内包した外側腹膜を認め,左腎は胸腔内には達していないことから左腎挙上の診断となった.術中操作中開胸となり,その際確認された胸腔内腫瘤を併せて摘出したところ,肺分画症の診断となった.児の術後経過は良好で日齢32に退院となった.胸腔の高さまで腎挙上を呈する症例は稀で,10,000人に1例以下とされ,その多くが無症状で経過し成人期に偶然発見される.今回我々は,胎児期に腎挙上像を確認した.先天性横隔膜ヘルニアの予後は肺低形成の有無に左右され,挙上した腎の存在自体は予後規定因子とはならないと考えられる.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(3)
442-442, 2013
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