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第126回学術集会(平成25年10月26日(土),27日(日))
【優秀演題】
近赤外線時間分解分光法による分娩時の脳血流測定―特に陣痛間歇時と怒責時の脳血流量変化について―
向 麻利1, 柏木 唯衣1, 中野 達生1, 仲谷 傅生1, 山崎 香織1, 内田 季之1, 鈴木 一有1, 杉原 一廣1, 伊東 宏晃1, 金山 尚裕1, 杉村 基2, 住本 和博3
浜松医科大学産婦人科1, 浜松医科大学産婦人科家庭医療学2, 川崎市立看護短期大学看護学部3
【目的】日本の妊産婦死亡率は低下してきたが,近年は横ばい状態である.その原因のひとつとして,妊娠高血圧症候群および分娩などに関連する脳血管障害が注目されている.このため,分娩時の脳血管障害の予防・管理は極めて重要な周産期医療の課題であるが,分娩時の脳血流などについての詳細は不明である.このため我々は,近赤外時間分解分光システム(TRS法)を用いて,分娩時(特に陣痛間歇時および怒責時)の妊婦脳血流モニタリングを行いその変化を検討した.【方法】対象は当院にて分娩となりインフォームドコンセントの得られた正常血圧妊婦(正常群N=22),妊娠高血圧症候群合併妊婦(PIH群N=10),無痛分娩症例(無痛群N=11)である.脳内総Hbを定量計測できるTRS法を使用して,陣痛間歇時ならびに怒責時に妊婦右前額部における脳内総Hb量の測定を行った.【結果】陣痛間歇時における脳内総Hb値は,正常群,PIH群,無痛群においてそれぞれ,48.0±2.2μM,51.5±2.0μM,49.1±2.0μMであった.また,怒責時には陣痛間歇時と比較してHb値が一時的に上昇し,怒責終了とともに低下する現象がみられた.間歇時の値を100%としてその上昇率を算出すると,正常群,PIH群,無痛群においてそれぞれ,8.2%,13.3%,4.9%の上昇が認められ,正常群と比較してPIH群では有意に高値,無痛群では有意に低値であった.【結論】妊婦の怒責時に脳内血流が一時的に増加する現象が観察され,PIH合併症例で特にその上昇は顕著であった.PIHに関連する脳血管障害との関連が示唆される所見である可能性がある.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(3)
469-469, 2013
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