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第126回学術集会(平成25年10月26日(土),27日(日))
【一般演題】
無痛分娩中にHELLP症候群へ進展し緊急帝王切開施行中に肝裂傷が発見された1例
大谷 利光1, 松村 聡子1, 倉崎 昭子1, 櫻井 真由美1, 持丸 佳之1, 荒瀬 透1, 大石 曜1, 永井 宜久1, 中野 眞佐男1, 大河内 美希2, 鈴木 康生2, 岡田 尚子2
けいゆう病院産婦人科1, けいゆう病院麻酔科2
【緒言】妊娠に伴う肝破裂は希であり,HELLP症候群に伴う肝破裂の報告は国内外ともに数例散見されるのみである.今回我々はHELLP症候群,分娩停止に対して緊急帝王切開施行中に偶然肝裂傷が発見された1例を経験したので報告する.【症例】症例は40歳,初産婦,IVF-ET妊娠.既往歴は特記すべき事項なし.妊娠38週0日,前期破水,陣痛発来のため入院.同日オキシトシン促進併用の無痛分娩施行中に血圧160/100mmHgと重症PIHとなり,CTG上variabilityの減少を認めた.子宮口は8cmで分娩停止していため緊急帝王切開の方針とした.腹膜切開の際に血性腹水を認めた.子宮破裂の所見は認めなかった.児を娩出,子宮筋層縫合後に腹腔内を再度検索したところ,肝周囲を中心とした上腹部に約450gの凝血塊を認めた.子宮,付属器からの出血は認めなかった.出血源を検索した結果,肝右葉に2cm大の裂傷を認め焼灼止血術を実施した.術中出血は羊水含め1410mlであった.術後はICUにてDIC,HELLP症候群の治療のため,RCC,FFP及び血小板の輸血,メシル酸ガベキサート,MgSO4投与等を行った.術後2日目にICU退出.その後経過良好で術後11日目に退院となった.【結語】今回我々は,HELLP症候群にて緊急帝王切開を施行,早期に肝裂傷を発見し止血し得た1例を経験した.しかし本症例には無痛分娩で痛みが緩和され,陣痛による疼痛と肝裂傷による腹腔内出血による疼痛の鑑別が困難であったという側面もある.PIHの患者において無痛分娩中に硬膜外麻酔で緩和されない疼痛を認めた際は痛みの部位を慎重に判断し,肝破裂の可能性も視野に入れ超音波や血液検査等を施行し,腹腔内出血の疑いがあれば速やかに開腹手術に移行する必要があると考えた.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(3)
474-474, 2013
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