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第126回学術集会(平成25年10月26日(土),27日(日))
【一般演題】
腹水貯留,CA125上昇にて婦人科癌が疑われた急性心不全の一例
新谷 大輔, 藤原 恵一, 長谷川 幸清, 吉田 裕之, 黒崎 亮, 西川 忠暁, 池田 悠至, 今井 雄一, 矢野 友梨, 市川 大介
埼玉医科大学国際医療センター婦人科腫瘍科
【背景】卵巣癌では血清CA125の上昇が92%の症例で見られるため,診断補助および治療効果の指標として汎用される.今回腹水貯留および多発頭蓋内病変を有し,CA125上昇を認め婦人科癌が疑われた心不全の一例を経験したため報告する.【症例】71歳女性1経妊0経産で既往なし.感冒症状,後頭部痛を主訴に近医で施行した単純CT/MRIにて多発頭蓋内病変,腹水貯留を指摘され当院脳脊髄腫瘍科に紹介.血清CA125が197.6U/mlと上昇を認め,婦人科癌の脳転移が疑われ当科受診.当科での精査で子宮,付属器に明らかな異常はなく,腹水細胞診も陰性.胸部単純撮影にてCTR70%と著明な心肥大,心エコーにて心房中隔欠損,心電図にて心房細動を認めた.頭部MRI施行し頭蓋内病変は陳旧性脳梗塞である事が判明.さらに全身PETを施行し明らかな悪性腫瘍なき事を確認.【考察】本症例は心房中隔欠損症による急性心不全から腹水貯留およびCA125上昇を認め,未治療心房細動による血栓にて多発脳梗塞を生じたと考えられる.CA125は卵巣癌の腫瘍マーカーとして広く用いられているが,本疾患におけるCA125の診断的精度は高くなく,肺癌,乳癌,子宮内膜症,月経,結核などで上昇を認め陽性的中率は70%未満,卵巣癌早期ではCA125の高値は50%程度であり,検査感度も高いとは言えない.またCA125は心不全症例の56%に上昇を認め,高値の症例は有意に予後不良である事が明らかとなり,近年心不全の予後因子として着目されている.本症例のCA125上昇は,腹水貯留に加え心不全そのものに起因するCA125上昇も関与している可能性が考えられた.【結語】CA125上昇症例においては,心疾患も含めた慎重な精査が必要であることが示唆された.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(3)
477-477, 2013
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