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第126回学術集会(平成25年10月26日(土),27日(日))
【一般演題】
下部消化管内視鏡検査を契機として発症した,結腸憩室症に起因するS状結腸子宮瘻の1例
佐藤 明日香, 奥谷 理恵, 小野 亜希子, 鈴木 義也, 海野 洋一
国保松戸市立病院産婦人科
【緒言】結腸憩室は近年増加傾向にあり,約10%の頻度で見られる.憩室炎を起こすと他臓器瘻を生じることがあるが,結腸膀胱瘻が多く結腸子宮瘻は稀である.今回,下部消化管内視鏡検査を契機として症状が出現し,結腸憩室症からの炎症波及によるS状結腸子宮瘻と診断された症例を経験したので報告する.【症例】67歳,2経産.帝王切開歴(子宮下部横切開)2回あり,2回目の帝王切開時に卵管結紮を施行.その他特記すべき既往歴,開腹歴なし.慢性的な便秘に対し前医で下部消化管内視鏡検査を施行し,腫瘍性病変は認めなかった.検査後から帯下増量を自覚し婦人科を受診.子宮内感染として抗菌薬治療を開始したが,症状が徐々に増悪したため造影CTやMRIなどの画像検索を施行したところ,結腸多発憩室とS状結腸周囲の炎症所見,子宮との癒着を認めた.注腸造影では明らかな瘻孔描出はなかったが,臨床的にS状結腸子宮瘻と診断し,開腹手術の方針とした.膀胱鏡検査では膀胱への瘻孔形成は認めなかった.開腹すると,子宮左側の広間膜内から後腹膜にかけて強固な癒着を認めた.術式は,腟上部切断術とS状結腸切除術(高位前方切除)としたが,癒着のため尿管の同定が困難であり,泌尿器科医の協力も要した.S状結腸断端は端々吻合を行い,術後縫合不全の徴候はなく経過良好であった.病理検査では,S状結腸憩室から子宮筋層に及ぶ膿瘍形成を認め,同部位に瘻孔が形成されたものと考えられた.【考察】結腸憩室症からのS状結腸子宮瘻は稀な疾患であるが,憩室の有病率増加に伴い今後頻度が増える可能性がある.手術の際は,慢性的な炎症から強固な癒着を形成している可能性が高く,他科との協力が不可欠である.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(3)
479-479, 2013
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