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第126回学術集会(平成25年10月26日(土),27日(日))
【一般演題】
サラゾスルファピリジンおよびフィナステリド投与に関連した精子減少症・無力症の治療経験
橋場 剛士, 松澤 由記子, 和地 祐一, 岩下 光利
杏林大学医学部産科婦人科学
[はじめに]潰瘍性大腸炎の治療薬であるサラゾスルファピリジン(SASP)は大腸の細菌により5-アミノサリチル酸(5-ASA)とスルファピリジンの結合が切断され,5-ASAが直接病変部に付着し炎症を抑えるが,もう一方のスルファピリジンが精子減少症を引き起こすとされている.また,男性型脱毛症の治療薬であるフィナステリドは5α-還元酵素阻害剤であり,テストステロンからジヒドロテストステロンへの変換を阻害し,造精機能障害を引き起こすとされている.これら2つの治療薬に関連した男性不妊の治療経過と問題点を報告する.[症例提示]症例1.35歳女性,0回経妊,原発不妊.不妊症スクリーニング検査で精子減少症・無力症を認めた.夫は潰瘍性大腸炎治療のためSASP内服中で,造精機能への影響が少ないメサラジンへの変更を検討したが,メサラジン誘発膵炎の既往があるためできないとのことであった.SASPを継続しながら洗浄人工授精を実施し,単胎妊娠成立となった.症例2.35歳女性,0回経妊,原発不妊.10歳時に心室中隔欠損症と僧帽弁閉鎖不全の根治手術.精液濃度は10万/mlで重度の精子減少症・無力症を認めた.夫は男性型脱毛症のため4年間フィナステリドを内服していた.期間を区切った休薬を夫に提案し,洗浄人工授精を6回実施したが妊娠成立せず,その間の精液所見の改善も認められなかった.顕微授精を実施し単胎妊娠成立した.[結語]SASPおよびフィナステリドは可逆性の造精子機能障害を引き起こすと報告されている.これらの薬剤は休薬または薬剤変更が困難で,人工授精や生殖補助医療を検討せざるをえないことがある.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(3)
519-519, 2013
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