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第126回学術集会(平成25年10月26日(土),27日(日))
【一般演題】
腟から上行性に感染したA群β溶連菌による原発性腹膜炎にToxic shock-like syndromeを合併した一例
遠見 才希子1, 小山 泰明2, 五十嵐 豪1, 中川 侑子1, 遠藤 紫乃1, 近藤 亜未1, 吉田 彩子1, 近藤 春裕1, 大原 樹1, 戸澤 晃子1, 田中 守1, 鈴木 直1
聖マリアンナ医科大学産婦人科1, 聖マリアンナ医科大学救命救急センター2
【緒言】原発性腹膜炎は,腹腔内臓器に明らかな穿孔や感染源を認めない腹膜炎とされ稀な疾患である.また,Toxic shock-like syndrome(TSLS)は,A群β溶連菌(GAS)の産生する外毒素により急速に敗血症性ショックに陥る死亡率24%とされる重篤な疾患である.今回我々は,腟培養を含む細菌培養検査により迅速に診断し集学的治療により救命したTSLSを呈した原発性腹膜炎の一例を経験したので報告する.
【症例】41歳女性.1週間前から発熱,3日前から腹痛,下痢,食思不振があり,近医より当院転院搬送された.来院時,BP 103/49mmHg,HR 132/min,BT 38.2℃,RR 46回/分,月経4日目,腹部全体の圧痛あり,軽度の子宮頸部可動痛を認めた.WBC 26000/μl,AST 79U/l,ALT 67U/l,Cr 5.55mg/dl,BUN 68.2mg/dlと肝腎機能障害を認め,CTにて腸管及び腹膜の肥厚,腹水,腹腔内遊離ガスを疑う所見があり試験開腹術を施行したところ,腸管穿孔はなく両側卵巣白苔付着と膿性腹水を認めた.術翌日に血液,腹水からGASが検出されたため,原発性腹膜炎及びTSLSと診断し,抗菌薬をメロペネムからペニシリンG,クリンダマイシンに変更した.その後,咽頭及び便培養は陰性であり,腟培養からGASが検出され,術中所見及び月経中であったことからも,腟からの上行性感染が考えられた.術後22日目に症状軽快し退院となった.
【考察】本症例では,早期に細菌培養検査を施行したことにより,GASによる原発性腹膜炎の診断及び適切な抗菌薬治療を行い救命することが可能であった.これまで原発性腹膜炎は感染の侵入経路不明と考えられていたが,今後,腟からの上行性感染という新たな疾患概念を検討する必要性があると考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 50(3)
522-522, 2013
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