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【原著】
当院での高齢分娩症例に関する後方視的検討〜高齢での分娩はそれ以外の分娩と比較して本当にハイリスクか〜
佐藤 加奈子, 宮腰 藍衣, 平田 豪, 上田 麗子, 竹内 梓, 笠井 絢子, 井畑 穰, 茶木 修, 中山 昌樹
横浜労災病院産婦人科
日本で周産期統計が開始されてから約60年,分娩平均年齢は上がり続けており,2011年の統計で初めて30歳を超えた.原因は女性の結婚年齢の上昇や生殖補助医療の発達と考えられ,今後も分娩年齢は上昇し続けると思われる.高齢妊娠,高齢分娩は一般的にハイリスクであると考えられている.果たして本当にハイリスクであるのか,また,具体的に我々産婦人科医が注意すべき点は何であるのかを検討した.対象は,2009年〜2011年の当院分娩症例2,336例とした.平均分娩年齢は32.6歳,高齢分娩(35歳以上の初産婦,40歳以上の経産婦による分娩)が489名で20.9%,40歳以上の分娩は167名で7.1%だった.そこで,分娩様式,合併症,胎児予後につきt検定とχ2検定を用いて有意差を調べた.その結果,高齢分娩が有意にハイリスクとなった項目は基礎疾患,急速遂娩,経腟分娩における出血量,子宮内感染での緊急帝王切開術であった.一方,帝王切開分娩率や早産率等,他文献で高齢分娩におけるリスクが指摘されている複数の項目で今回有意差が認められなかった.この結果から,高齢分娩のリスクを否定するのではなく,非高齢分娩でも同等に慎重な周産期管理が必要だと考える.高齢分娩,非高齢分娩ともに,異常の早期発見,適切な医療介入が重要だと思われる.
Key words:aged pregnancy, high risk pregnancy caesarean section, maternal complication
関東連合産科婦人科学会誌, 50(4)
545-551, 2013
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