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【症例報告】
妊娠中に急性呼吸窮迫症候群を発症した一例


中原 万里子, 田嶋 敦, 濱村 憲佑, 矢田 昌太郎, 今野 秀洋, 上山 和也, 窪 麻由美, 白井 洋平, 鈴木 千賀子, 野島 美知夫, 吉田 幸洋
順天堂大学医学部附属浦安病院産婦人科


 急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome:以下ARDS)は,肺へのさまざまな種類の損傷によっておこり,レントゲン上の両側肺浸潤影とPaO2/FiO2(以下P/F比)≤200 mmHgを特徴とする急性発症の低酸素性呼吸不全である.原因として,肺炎,誤嚥,敗血症等が挙げられている.今回我々は,妊娠中にARDSを発症した一例を経験したので報告する.症例は31歳,0経妊0経産.自然妊娠成立後,近医で妊婦健診を行い,順調に経過していた.妊娠30週2日より発熱,咳嗽を認め,近医で抗生剤投与により加療を行うも呼吸苦が出現し,SpO2は90%と著明な低下をきたしたため,妊娠31週0日に当院へ母体搬送,緊急入院となった.胸部レントゲン上,両側肺野に浸潤影を認め,リザーバーつきマスクでO2 15 L/min投与下でもPaO2 44 mmHgであったため,ARDSの診断で人工呼吸器を装着した.原因検索を行ったが,インフルエンザ,マイコプラズマ,抗酸菌の感染は否定的であった.抗生剤投与,ステロイドパルス療法,シべレスタットナトリウム200 mg/日投与にて加療を行ったところ,全身状態の改善を認め,妊娠32週3日に人工呼吸器を離脱,妊娠34週5日退院となった.その後,妊娠40週5日に陣痛発来し入院,NRFSのため,鉗子分娩となった.出生した児は2,888 gの男児でApgar score 1分値8点/5分値9点,臍帯動脈血液pHは7.305であった.母児ともに経過良好で産褥5日目に退院となった.

Key words:ARDS, acute respiratory distress syndrome, pregnancy

関東連合産科婦人科学会誌, 50(4) 591-599, 2013


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