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【症例報告】
若年に発症し予後不良であった卵巣癌Mucinous adenocarcinoma with mural nodule(anaplastic carcinoma)の1例
林 千景1), 永田 知映1), 井上 桃子1), 高橋 一彰1), 山本 瑠伊1), 堀谷 まどか1), 国東 志郎1), 上田 和1), 斉藤 元章1), 矢内原 臨1), 高倉 聡1), 鷹橋 浩幸2), 山田 恭輔1), 落合 和徳1), 岡本 愛光1)
東京慈恵会医科大学産婦人科1), 同 病理学講座2)
卵巣粘液性腫瘍には壁在結節mural noduleを伴うまれな特殊型がある.Mural noduleの組織型は,sarcoma-like nodule, sarcoma, anaplastic carcinomaに分けられる.当院で若年に発生し予後不良であったanaplastic carcinomaの成分からなるmural noduleを伴う卵巣粘液性腺癌の1例を経験したので報告する.症例は26歳0経任0経産で,腹部膨満感を主訴に当院を受診した.画像検査により卵巣粘液性境界悪性腫瘍が疑われ,右付属器摘出術及び大網切除術を行った.病理診断は右卵巣に限局するmucinous adenocarcinoma with mural nodule(anaplastic carcinoma)T1c(b)N0M0であった.患者側の希望により根治手術・補助化学療法は行わなかった.初回治療より1年4か月後に第5腰椎に転移を認め,化学療法・放射線照射を行ったが,骨盤内再発,多発肺転移と癌性リンパ管症を発症し,2年7か月後に死亡した.Mural noduleを伴う卵巣粘液性腺癌はまれであり,本症例のように若年に発生した場合は妊孕性温存手術の可否や術後化学療法の必要性など,治療方針の決定に苦慮する.Mural noduleがanaplastic carcinomaで構成される例の予後は一般的に不良であるが,anaplastic carcinomaを伴っていても臨床進行期Ia期では予後良好であるとの報告もある.しかし本症例は不幸な転帰を辿っており,今後更なる症例の集積および検討が必須であると考えられる.
Key words:mucinous adenocarcinoma, mural nodule, anaplastic carcinoma
関東連合産科婦人科学会誌, 50(4)
613-618, 2013
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