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【症例報告】
胸水貯留を契機とし,術前診断を正常大卵巣癌症候群として治療し得た卵巣原発漿液性腺癌の1例
佐々木 麻帆, 佐治 晴哉, 堀田 裕一朗, 小林 奈津子, 板井 俊幸, 田吹 梢, 石寺 由美, 服部 信, 平吹 知雄, 白須 和裕
小田原市立病院産婦人科
正常大卵巣癌症候群(normal sized ovary carcinoma syndrome,以下NSOCS)は原発不明癌の術前診断として捉えられている概念で,婦人科癌由来であることが多い.今回我々は,胸水貯留を契機とし,術前診断をNSOCSとして治療し得た卵巣原発漿液性腺癌の1例を経験したので報告する.症例は71歳,咳嗽を主訴に近医を受診し,右胸水を指摘.胸水より異型腺細胞を検出するも,血清CA125高値を認め,転移性肺癌を疑われた.CTでは右胸水以外に明らかな異常所見を認めず,腹水も指摘されなかった.PETでは子宮近傍にのみFDG集積を認めたため,婦人科由来の悪性腫瘍を疑われた.子宮内膜吸引細胞診にて子宮外からの異型腺細胞を認め,NSOCSを視野に開腹手術の方針となった.開腹所見より,両側卵巣の腫大がなく,卵巣実質への比較的広範囲の浸潤を認めたこと,病理組織学的に漿液性乳頭状腺癌であったことから原発性卵巣癌IV期と診断した.胸水貯留の機序については,腹膜播種像が広範に認められたことから,直接浸潤による胸膜播種から産生された可能性が考えられた.腹水貯留の明らかでない卵巣癌の術前診断方法として子宮内膜細胞診は有用である.更に,血清CA125値の上昇,PETによる原発巣検索を組み合わせることで,迅速な手術療法を行い得たことが,良好な結果につながったと考えられた.
Key words:Normal sized ovary carcinoma syndrome(NSOCS), Pleural effusion, Endometrial cytology, Occult primary tumor, High grade serous papillary adenocarcinoma
関東連合産科婦人科学会誌, 50(4)
635-641, 2013
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