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【症例報告】
全身麻酔時挿管後の喉頭浮腫:術後気管切開を要した高度肥満と強直性脊椎炎とを合併した帝王切開例
梶山 明日香, 鳥羽 三佳代, 大井 理恵, 宮坂 尚幸, 久保田 俊郎
東京医科歯科大学周産女性診療科
妊婦の全身麻酔は特有のリスクがあり,肥満を合併するとリスクはさらに高まる.今回,分娩停止のため全身麻酔下緊急帝王切開術を行い,その後喉頭浮腫をきたし気管切開を要した高度肥満および強直性脊椎炎(Ankylosing spondylitis, AS)合併妊娠を経験したので報告する.症例は35歳,初産婦.2年前から発作的な背部の激痛があり,内科でASと診断され当院に通院していた.自然妊娠し妊娠9週2日に当科を初診.BMI 40.5と高度肥満を認めたが妊娠経過は良好であった.妊娠40週3日陣痛発来したが,回旋異常により分娩停止となった.ASと高度肥満のため麻酔科と協議の後,全身麻酔で緊急帝王切開を行うこととした.短頸のため挿管困難であり複数回の操作後に気管内挿管に至った.手術自体は問題なく終了したが,帰室後より咽頭の違和感があり,徐々に疼痛,嗄声,呼吸苦症状が出現した.術翌日より喉頭浮腫の診断でステロイド投与を行ったが浮腫の増悪を認めたため,上気道閉塞の予防目的で術後2日目に緊急気管切開術を施行した.その後症状は軽快し,気切後6日目にカニューレを抜去し気切後12日目に退院した.本症例ではASを合併し脊椎に炎症所見があり,肥満もあったことから帝王切開時に全身麻酔が選択された.妊婦の全身麻酔下手術時には,高度肥満や開口障害など挿管の危険因子の確認と,慎重な周術期管理が必要である.
Key words:difficult airway, obstetric anesthesia, obesity, ankylosing spondylitis, laryngeal edema
関東連合産科婦人科学会誌, 50(4)
649-654, 2013
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