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【症例報告】
静脈内平滑筋腫症の一例
若林 玲南1), 今井 一章1), 時長 亜弥1), 大井 由佳1), 鈴木 理絵1), 武居 麻紀1), 安藤 紀子1), 林 宏行2), 茂田 博行1)
横浜市立市民病院産婦人科1), 同 病理診断科2)
静脈内平滑筋腫症(Intravenous Leiomyomatosis,以下IVL)は,平滑筋組織が静脈内へ発育伸展する比較的稀な疾患である.組織学的には良性であるが,時に下大静脈,心臓内まで連続的に広がり,突然死の原因ともなり得る重要な疾患である.今回,我々は静脈内平滑筋腫症の一例を経験したので報告する.症例は47歳,3経妊2経産,近医にて増大する骨盤内腫瘤を指摘され,精査加療目的にて当院紹介受診となった.内診上,臍上に達する腫瘤を認め,超音波検査では腫瘤は充実性で内部不整であり,子宮腫瘍が疑われた.子宮頸部,内膜細胞診は異常なく,腹部骨盤単純MRI検査では剣状突起より2 cm下方までの径30 cmの巨大腫瘤が認められ,多彩な内部信号を呈していた.腹部骨盤単純CTでは腫瘍内部は不均一な濃度を呈し,リンパ節腫大は認めなかった.血液検査上,LDH 215 IU/l, CA125 57.5 U/mlと軽度上昇を認めた他,異常所見を認めなかった.急速に増大した臨床経過および画像所見より,子宮肉腫または変性筋腫を疑い,手術を施行した.手術所見では,巨大子宮腫瘍を認め,子宮は全体として10.2 kgであった.また,子宮と連続した硬い策状物を認めたため,子宮・両側付属器および策状物を摘出した.病理組織診断において策状物は腫瘍塞栓を伴う静脈であり,静脈内平滑筋腫症と診断した.画像上,腫瘍の下大静脈などの大血管への残存はなく,術後約1年半の時点で再発所見なく経過している.
Key words:Intravenous Leiomyomatosis, Leiomyoma
関東連合産科婦人科学会誌, 50(4)
661-665, 2013
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