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【症例報告】
卵巣癌治療により多発性筋炎の寛解が得られた一例
藤井 温子, 丸山 俊輔, 多賀 敦子, 安本 晃司, 白岩 幹正, 小阪 謙三
静岡県立総合病院産婦人科
近年多発性筋炎と皮膚筋炎は異なる病態であることが明らかとなりつつあり,多発性筋炎は皮膚筋炎と比較すると悪性腫瘍合併の頻度は低いことが知られている.今回,卵巣癌治療により多発性筋炎の寛解を得られた症例を経験したので報告する.症例は55歳.3経妊2経産.52歳閉経.20XX年5月より上肢の脱力を自覚し7月に当院神経内科を受診.クレアチンキナーゼ(以下CK)の上昇と臨床所見から多発性筋炎と診断.神経内科でステロイドパルス療法,免疫抑制療法後CKは半減するも正常化しなかった.悪性腫瘍検索目的の全身CTで卵巣腫大を指摘され当科紹介受診となり,進行卵巣癌の診断の下,腹式単純子宮全摘+両側付属器切除+S状結腸合併切除および人工肛門造設術を施行した.術後診断は卵巣漿液性腺癌IIIC期で,術後化学療法を施行した.化学療法開始後,CA125と共にCKも著明に低下し,発症から半年後に多発性筋炎は寛解を得た.術後約2年の時点で卵巣癌は再燃し抗癌剤の変更を繰り返している一方で多発性筋炎の再燃は認めていない.卵巣癌を合併する多発性筋炎では卵巣癌の治療を優先させるべきと考えられた.また,多発性筋炎と皮膚筋炎では病態が異なることが明らかとなりつつあり,悪性腫瘍合併の頻度も違うと考えられるため,悪性腫瘍合併症例では両疾患を区別して記載・検討し症例の蓄積を行うことが原疾患のより詳しい病態解明に役立つ可能性が考えられた.
Key words:Ovarian Cancer, Polymiositis, Dermatomyositis
関東連合産科婦人科学会誌, 50(4)
711-717, 2013
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