|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
【特集】
胎児頻脈性不整脈に対する経胎盤的薬物治療例と臨床試験
杉林 里佳, 谷口 公介, 岡田 朋美, 住江 正大, 和田 誠司, 左合 治彦
国立成育医療研究センター周産期センター
胎児頻脈性不整脈は,無治療では胎児水腫を来し子宮内胎児死亡に至る場合があり予後不良症例が存在する.胎児頻脈性不整脈に対する経胎盤的薬物治療の有用性が報告されており,治療法の確立を目指して厚生科研費の研究班による臨床試験を開始している.当院で施行した経胎盤的薬物治療例(臨床試験前と臨床試験例)の治療成績と予後を明らかにすることを目的とし検討を行った.2002年3月より2012年7月までに当院で胎児頻脈性不整脈と診断し,経胎盤的薬物治療を施行した10例を対象とし後方視的に検討した.頻脈性不整脈10例中8例は上室性頻拍であった.使用薬剤はジゴキシン・フレカイニド併用5例,ジゴキシン投与2例,ソタロール投与1例であった.心房粗動症例は2例で,いずれもジゴキシン・ソタロール併用であった.平均治療開始週数は32.1週で,胎児水腫症例4例を含む全例で不整脈の消失もしくは改善を認めた.平均分娩週数は37.5週であり,母体への重篤な合併症も認めなかった.上室性頻拍症例は生後も内服加療を継続しているが,心房粗動症例は生後頻脈発作を認めず無治療で経過観察中であり,どちらも死亡例は認めなかった.頻脈性不整脈に対する経胎盤的薬物治療では全例で不整脈の改善を認め,生産に至り予後も良好であった.
Key words:Arrhythmia, fetus, Supraventricular tachycardia, Atrial flutter, Anti-Arrhythmia Agents
関東連合産科婦人科学会誌, 50(4)
735-740, 2013
|