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【症例報告】
産褥期に発症したMRSAによる感染性心内膜炎の1例
稲垣 萌美, 浅野 涼子, 飯沼 綾子, 加藤 宵子, 永田 亮, 香川 愛子, 長野 研二, 長瀬 寛美, 段 泰行, 飛鳥井 邦雄
横浜南共済病院産婦人科
産褥期のMRSAによる感染性心内膜炎を経験したので報告する.症例は33歳2妊2産.前医にて第2子を正常分娩.腟培養の結果GBS陽性のため分娩時に新生児GBS感染症の予防目的にABPCを使用.産褥21日目に40度の発熱が出現し,採血にてWBC 10,700/μl, CRP 11.4 mg/dlと炎症反応の上昇を認め,内診上子宮に著明な圧痛を認め子宮内膜炎の診断で緊急入院した.入院後2日間のCTRXとCLDMで改善なく,MRSAを念頭にVCMとBIPMに変更したがその後も改善は見られなかった.感染巣の全身検索を行い,心臓超音波検査で僧房弁に2 mm大の疣贅を認め感染性心内膜炎が疑われた.感染性心内膜炎の治療ガイドラインに沿って抗菌薬をCEZとGMに変更したが,その後入院時の血液培養結果がMRSA陽性と判明したため抗菌薬をLZDとGMに変更.炎症所見は改善したが僧房弁の疣贅は28 mmに増大し,感染性心内膜炎と診断.保存的治療に反応不良のため,心臓血管外科により僧房弁部分切除・僧房弁形成術を施行.術後LZDを6週間,GMを4週間継続.術後経過は良好である.本症例は産褥期にMRSAによる子宮内膜炎から,菌血症,SIRSおよび感染性心内膜炎に至ったと推察した.産褥期の発熱で抗菌薬を投与しても改善しない場合は,感染性心内膜炎も疑い血液培養と心臓超音波検査を施行することが望ましいと考える.
Key words:infectious endocarditis, endometritis, MRSA, postpartum, pregnancy
関東連合産科婦人科学会誌, 51(1)
33-37, 2014
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