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【症例報告】
茎捻転を起こした卵巣成熟囊胞性奇形腫に伴った硬化性間質腫瘍の1例
遠藤 紫乃, 大熊 克彰, 秦 ひろか, 杉下 陽堂, 田中 守1), 鈴木 直1)
川崎市立多摩病院産婦人科, 聖マリアンナ医科大学病院産婦人科1)
硬化性間質性腫瘍(sclerosing stromal tumor:SST)は,稀な性索間質性腫瘍であり,ほとんどは30歳以下の若年女性に発症する.今回我々は,茎捻転を起こした卵巣成熟囊胞性奇形腫に伴った硬化性間質性腫瘍を経験したので報告する.症例は19歳0経妊0経産婦.突然発症した持続する下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診.CT検査で卵巣腫瘍を認めたため産婦人科へコンサルトとなった.内診にて左下腹部に自発痛と圧痛を認め,経腟超音波とCT所見から卵巣成熟囊胞性奇形腫茎捻転を疑い,同日開腹手術を施行した.開腹所見では鶏卵大の左卵巣腫瘍が反時計回りに360度回転していたが,捻転を解除したところ血流は改善し,壊死部分も無かったために卵巣腫瘍摘出術を施行して正常卵巣は温存した.摘出腫瘍の大部分は奇形腫と考えられたが一部に非常に硬い腫瘤を認めた.最終病理診断は成熟囊胞性奇形腫と硬化性間質性腫瘍であった.術後の経過は良好であった.これまで報告されているSSTの大きさは径8 cm以上のものが多い.本症例のように小さく,さらに他の腫瘍と合併しているものは比較的まれである.このため術前診断は困難であった.術後の摘出検体の中に線維腫様に非常に硬い組織があれば,SSTの合併も考慮する必要があると思われた症例を経験した.
Key words:sclerosing stromal tumor, sex cord stromal tumor
関東連合産科婦人科学会誌, 51(1)
87-92, 2014
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