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【症例報告】
Parasitic leiomyomaが原因で左付属器を茎捻転させた急性腹症の一例
中川 侑子1), 大熊 克彰1), 秦 ひろか1), 吉田 彩子1), 田中 守2), 鈴木 直2)
川崎市立多摩病院産婦人科1), 聖マリアンナ医科大学病院産婦人科2)
Parasitic leiomyoma(以下PL)は子宮と連続性を持たない平滑筋腫である.今回我々は,自然発生と思われるPLが原因で左付属器を茎捻転させ,急性腹症を呈した一例を経験したので報告する.症例は42歳の0経妊0経産.現病歴は4年前に子宮筋腫と卵巣囊腫を指摘されたが,放置していた.月経4日目の深夜に突然の左下腹部痛と嘔吐を認め,当院へ救急搬送された.下腹部CTで約8 cm大の骨盤内腫瘍を認め,卵巣腫瘍茎捻転の疑いで産婦人科コンサルテーションとなった.精査にて右卵巣に約3 cm大の子宮内膜症性囊胞を認め,左卵巣は異常所見を認めなかった.左卵巣付近に約8 cm大の充実性腫瘤を認め,卵巣腫瘍や後腹膜腫瘍などを考えた.左下腹部痛が周期的で茎捻転が強く疑われたため緊急開腹術を施行した.開腹所見では約8 cm大の腫瘤が大網と左卵管とで癒着しており,左骨盤漏斗靭帯で茎捻転を起こしていた.大網と左卵管との癒着を剝離した後,大網からの栄養血管を離断し腫瘍を摘出した.左付属器に関しては捻転解除後も血流は改善しなかったため左付属器切除術を施行した.術後病理診断は,腫瘍は大部分が壊死組織だが一部紡錘形の痕跡が認められ,平滑筋腫に矛盾しない結果であった.本症例は子宮筋腫手術歴がないため,自然発生のPLと考えられる.これが左付属器を茎捻転させて急性腹症を呈したと考えられた.
Key words:parasitic leiomyoma, torsion
関東連合産科婦人科学会誌, 51(1)
107-112, 2014
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