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【症例報告】
無機ヨードが奏功した妊娠時一過性甲状腺機能亢進症の一例
志村 茉衣, 須郷 慶信, 若林 玲南, 額賀 沙季子, 合田 麻由, 時長 亜弥, 大井 由佳, 鈴木 理絵, 武居 麻紀, 安藤 紀子, 茂田 博行
横浜市立市民病院産婦人科
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(以下hCG)はTSH受容体を刺激する作用を有している.そのため,hCG高値となりやすい妊娠初期では一過性の甲状腺機能亢進所見を呈することがあり,近年,妊娠時一過性甲状腺機能亢進症(gestational transient hyperthyroidism,以下GTH)として注目されるようになった.今回我々は,強い妊娠悪阻症状を伴うGTHを呈した2絨毛膜2羊膜性双胎(以下DD双胎)の一例を経験したので報告する.症例は32歳,0回経妊0回経産.妊娠初期に頻回の嘔吐,体重減少,頻脈を認め,妊娠悪阻の診断で輸液による治療を受けたが症状が改善せず当院紹介受診となった.TSH低値,FreeT3高値,FreeT4高値,hCG高値,甲状腺に対する自己抗体は全て陰性でありGTHと診断した.妊娠悪阻の症状が強く,妊娠14週から妊娠16週に無機ヨード内服加療を行ったところ,嘔気・頻脈ともに改善,TSH, Free T4, Free T3は正常範囲内となった.妊娠37週4日に選択的帝王切開術を実施し,2児ともにAFD,アプガールスコア9点/1分にて出生,ともに異常を認めなかった.妊娠悪阻症状の強い妊婦ではGTHを考慮する必要がある.また,GTHの多くは短期間に自然軽快するため治療を必要としないことが多いが,妊娠悪阻症状が強い場合には無機ヨードが治療の選択肢となり得ると考えられた.
Key words:gestational transient hyperthyroidism, inorganic iodine
関東連合産科婦人科学会誌, 51(1)
113-117, 2014
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