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【症例報告】
妊娠初期に診断し保存的に治療し得た腹腔妊娠の1例


今西 俊明1)2), 宮本 強2), 古川 哲平2), 岡 賢二2), 鹿島 大靖2), 橘 涼太2), 小原 久典2), 芦田 敬3), 近藤 沙織4), 塩沢 丹里2)
伊那中央病院産婦人科1), 信州大学医学部産科婦人科学教室2), 川口市立医療センター産婦人科3), JA長野厚生連佐久総合病院産婦人科4)


 腹腔妊娠は異所性妊娠の1%程度と稀だが死亡率が高く,早期診断・治療が重要である.しかし妊娠初期での腹腔妊娠の診断は困難であり,術中に判明する例も多い.また治療方針も確立しておらず,切除術は止血困難となることが予想される.今回我々は,妊娠8週にダグラス窩腹腔妊娠と診断し,保存的に治療し得た症例を経験した.症例は31歳0回経産,妊娠8週4日に近医の超音波検査で子宮後方に胎囊様腫瘤を指摘され,子宮外妊娠の診断で当科紹介となった.当科初診時,血中hCG値62,500 IU/l.超音波検査では,ダグラス窩に頭殿長16.7 mmの心拍陽性胎児を伴う3 cmの胎囊を認め,MRIで胎囊は直腸と密に接し,直腸側からの血流が確認されたため,ダグラス窩腹腔妊娠と診断した.切除術では止血困難な多量出血や直腸損傷の危険性が考えられたため,保存的治療の方針とした.妊娠8週5日,経腟超音波ガイド下に塩化カリウム溶液(KCL)を胎児に注入して胎児心拍を停止させ,メトトレキサート(MTX)80 mgを筋注した.特に合併症なく経過し,血中hCGはKCL投与後68日目には測定感度以下となった.その約半年後に自然妊娠成立し,経腟分娩で生児を得ている.MRIは腹腔妊娠の早期診断に有用と考えられ,KCLによる胎児心拍停止を併用したMTX療法は腹腔妊娠に対しても有効な治療法であることが示唆された.

Key words:abdominal pregnancy, magnetic resonance imaging, conservative management, methotrexate, feticide

関東連合産科婦人科学会誌, 51(1) 125-131, 2014


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