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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))

【ワークショップ1】
当院における神経温存広汎性子宮全摘出術


山本 晃人
日本医科大学千葉北総病院


 婦人科手術において,広汎性子宮全摘出術にともなう排尿機能障害は術後のQOLを損なう最も重大な合併症の1つであり,以前より膀胱機能を温存するための試みが行われてきた.
 わが国での広汎性子宮全摘出術は岡林術式に始まり,1961年に小林が骨盤神経叢およびその膀胱枝を温存する術式を提唱した.その後,神経温存術式は諸家による改良が加えられ,現在では術後の排尿機能をある程度保持し得る術式として広く認められるに至った.しかしながら,神経温存手術を施行したにもかかわらず排尿障害や膀胱知覚障害が長期間持続する症例もいまだに認めるのが現状であり,今後も更なる術式改善の余地があると言えよう.
 当院での自律神経温存手術は他施設での手技と大差はないものと考えるが,実際の手順は以下に示すものである.1.直腸側面から下腹神経を剥離する.2.下腹神経の剥離を仙骨子宮靭帯まで行い,骨盤神経叢への合流部まで進める.3.膀胱子宮靭帯前層を切除し,尿管を外側に転がす.露出した膀胱子宮靭帯後層を小分けに丁寧に分離結紮する.この時,膀胱静脈を深子宮静脈から切断する.4.基靭帯血管部(深子宮静脈)を切断し,子宮方向へこき上げる.5.骨盤神経叢からの枝である子宮枝を切断し,子宮摘出に必要な高さに応じて骨盤神経叢を外側へよける.6.直腸腟靭帯,腟傍結合組織を切断し,必要な高さで腟管を切断する.
 我々が心掛けるのは,膀胱子宮靭帯後層を処理する際には背外側を走行する神経の損傷を避けるため,必要以上に外側から切断しない.また,子宮枝を切断した後,骨盤神経叢(いわゆるT-shape)を外側に剥離する操作も必要最小限に止めている.神経叢の剥離による損傷を防ぎ,また膀胱枝内側の血管損傷による出血とその止血による膀胱枝の損傷を回避することが目的である.これらの手技は神経温存を考慮しない従来の術式に対し明らかに縮小手術となるため,根治性を損なわない症例の選択を行う必要がある.
 当院では,神経温存手術の適応は子宮頸癌FIGOIIA期までとし,IIB期に関しては明らかに子宮傍組織浸潤を認めない片側のみ神経温存を行っている.当院での2007年から2012年までの手術症例を対象とした後方視的検討では,自立神経温存手術における術後排尿障害は有意に軽減されたが局所再発率に差を認めなかった.したがって,神経温存手術は術後排尿障害を有意に軽減し,患者のQOLに大きく寄与するものであり,初期子宮頸癌に対しては積極的に考慮されるべき術式であると考える.


関東連合産科婦人科学会誌, 51(2) 210-210, 2014


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