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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【ワークショップ1】
当院における腹式広汎性子宮頸部摘出術
田中 京子, 青木 大輔
慶應義塾大学
子宮頸癌治療ガイドライン(2011年度版)によれば臨床進行期IA2期には骨盤リンパ節郭清を含む準広汎子宮摘出術以上の手術,それ以上の進行病変に対しては原則として広汎子宮全摘出術が推奨されており妊孕性温存治療は困難であるが,近年,初期の浸潤子宮頸癌(IA2期,IB1期)に対する妊孕性温存治療として広汎性子宮頸部摘出術が行われている. 広汎性子宮頸部摘出術は子宮頸部初期浸潤癌に対する妊孕能温存手術として考案された術式であるが,世界的には腹腔鏡下に骨盤リンパ節郭清を行い,腟式子宮頸部摘出術を組み合わせた腟式手術が多く行われており開腹術式は少ない.当院では2002年9月より腹式に広汎性子宮頸部摘出術を行っているが,手術にあたっては,患者本人,家族にあくまで広汎子宮全摘出術が標準術式であり,本術式は非標準治療であることを十分にインフォームドコンセントした上で,妊孕性温存を強く希望する症例に対してのみ適応としている. 当院で行っている腹式広汎性子宮頸部摘出術の概要は,広汎子宮全摘出術に準じて骨盤内リンパ節を郭清し,基靱帯を骨盤壁で処理する. 次いで,子宮動脈本幹と上行枝を温存しながら子宮頸部を切除する.その後,頸管縫縮および残存子宮頸部と腟との接合を行う.頸管縫縮は初期に行った症例を除いて全例に行っている. 以前は術後の頸管狭窄予防のためにIUDとカテーテルを挿入していたが,現在は従来のカテーテル留置法に代わり新しく残存頸管(neo-cervix)形成の工夫を行っており,比較的良好な感触を得ている. ドレーンを挿入し,閉創は術後のリンパ嚢胞発生予防のために円靭帯から卵巣固有靭帯に沿っての後腹膜を開放とし,癒着防止剤を使用している. 2011年12月までに170例に手術を試みたが,16例は術中にリンパ節転移や癌の遺残のために標準治療である広汎子宮全摘出術に移行した.完遂した154例のうち,術後の病理検査で再発リスクを評価し,術後治療(初期は放射線治療,現在は化学療法)を必要とした症例は22例であった. 周産期学的アウトカムに関しては,経過観察をしている130人のうち77人が妊娠を試み,25人で32妊娠に至った.32例中23人(72%)が人工授精や体外受精などの生殖補助医療を行っていた.妊娠32例中24例が帝王切開による出産に至ったが,24例中9例は32週未満の早産となった. 腹式広汎性子宮頸部摘出術は腟式に比較して妊娠率の低さが指摘されており,また,頸管縫縮術を行っているために流産の処置が困難になることや早産に伴い新生児を専門とする医師の協力なくしては分娩が成り立たない状況など周産期学的アウトカムに満足しているとは言いがたい.子宮頸癌の根治性と妊娠率の向上については今後さらに症例を積み重ねて検討,解析していく必要があると考えている.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
211-211, 2014
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