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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【ワークショップ1】
卵巣がん根治術のポイントと工夫
高野 浩邦, 田畑 潤哉, 大和田 彬子, 山下 修位, 黒田 高史, 山村 倫啓, 宇田川 治彦, 小曽根 浩一, 田部 宏, 佐々木 寛
東京慈恵会医科大学附属柏病院
卵巣がんにおける標準術式は,子宮摘出,両側付属器摘出,大網切除,傍大動脈から骨盤内のリンパ節郭清を行うことである.腫瘍組織が卵巣にとどまっている状況であれば,標準術式を行い完全手術へと持ち込むことはさほど大変な手術ではない.しかし,現在迄の文献的なデータが示すごとく,卵巣がんにおいては肉眼的に残存腫瘍を限りなくゼロに近づけることが大切となると,卵巣以外に腫瘍が存在する症例において,根治術の難易度は急激に上昇する.腫瘍の進展は大きく2つの傾向があると考えられる,ひとつはリンパ節への転移が目立つ症例,そして,もうひとつは腹腔内に腫瘍が進展していく症例である.もちろん両方共に認められる症例も存在するが,後者の腹腔内に広く播種されて行く進展様式が卵巣がんにおいては比較的特徴的である.腹腔内に広範囲に播種している症例においては,その程度によるが進行した症例では子宮摘出,付属器摘出といった基本的な手術でさえ通常の手技では完遂不可能であることが少なくない.腹腔内の進展様式も2つあると考えられる.ひとつは卵巣から周囲に直接浸潤が進んでいく場合と,卵巣から離れた位置にある腹膜,大網や横隔膜へ播種している場合である.まず横隔膜等の腫瘍については所謂ストリッピングが基本となる.腫瘍の存在する横隔膜表面を剥離して腫瘍切除を試みるが,腫瘍の深達度により場合によっては横隔膜を全層貫通している場合があり,この場合は横隔膜を部分切除する.欠損が大きい場合ゴアテックスパッチ等で補填を行う.その他独立した腹膜への転移は腹膜切除にて対応する.大網はomental cakeの状態となっていることが多く,大網と周囲の腸管,場合によっては脾臓,膵臓一部等と一塊となっている場合も存在し,その場合は適宜腸管合併切除,脾摘,膵尾部切除を行う.そして,卵巣から直接周囲への浸潤が激しい場合,むしろこの状態において内性器を摘出することが困難となり完全手術への大きな障害となることが多い.ダグラス窩に病変がある場合,膀胱表面に腫瘍が及んでいる場合,そして完全にダグラス窩が閉鎖,更には子宮および卵巣自体が埋没している場合,およそ通常の内性器全摘の術式が通用しない症例も多い.このような場合,当院では基本的に後腹膜からのアプローチを行っている.まず,腸骨窩の腹膜を切開,後腹膜展開し円靱帯を恥骨からの起始部で切断,後腹膜を頭側へ展開し尿管遊離,卵巣動静脈処理.後腹膜腔への浸潤が高度である場合はさらに膀胱側腔,直腸側腔を開放し子宮動脈本管を処理した後,結腸の合併切除に向け基靱帯血管も産婦人科で処理を行っている.膀胱表面に腫瘍塊が存在する場合,恥骨の裏面から膀胱前腔を開放し膀胱内に生理食塩水を充満させ膀胱を緊満させて膀胱との境界を明らかにし膀胱剥離を行う.更に子宮頸部まで露出させ膣管を切断し膣管を縫合した時点で,結腸と内性器を全て一塊とし合併切除することで完全手術への一助としている.当日はいくつかの画像を用い,実際の術式についてお示ししたい.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
212-212, 2014
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