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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【ワークショップ1】
子宮体がん治療の個別化の工夫
加藤 久盛
神奈川県立がんセンター婦人科
子宮体がん治療ガイドライン2013年版によると,術前にI期と考えられる症例に対する子宮摘出術式は腹式単純子宮全摘出術(筋膜外術式)が奨められ,拡大単純子宮全摘出術あるいは準広汎子宮全摘出術も考慮されるとあり,この点には異論のないところと考える.一方で骨盤リンパ節(PEN:Pelvic Lymph node)廓清,傍大動脈リンパ節(PAN:ParaAortic Lymphnode)廓清または生検は正確な進行期を決定する上での診断的意義は確立されているとするも,治療的意義は確立していないとされ,中,高リスク群と予想される症例では廓清が考慮されるとの表現にとどまっている.そこで当科では1998年4月以降子宮体癌手術の個別化を提唱し,術前に評価項目の程度により点数化し,点数による術式を定め,その方針に基づいて治療を実践してきたので紹介したい.組織型,筋層浸潤,腫瘍体積,血清CA125を評価項目とした.組織型は類内膜腺癌G1以外の組織型に1点,筋層浸潤が1/2以上を超すものに1点,腫瘍体積(便宜上,3方向の積)が6cm3を超すものを1点,CA125が高値(閉経前70U/ml超,閉経後25U/ml超)のものを1点とし,4点満点の点数法で行った.術前0点の予測される例ではリンパ廓清を省略,1〜2点ではPENまでの廓清,3点以上ではPANまでの廓清を原則とした.中山ら(2012年)は1998年から2011年までの評価可能であった637例を対象に術後の病理診断による個別化点数とリンパ節転移の関係をまとめている.それによれば0点151例のうちPENまで廓清34例中PEN転移0例,1点171例のうちPENまで廓清102例中PEN転移2例,PANまで廓清9例中PEN転移1例,2点125例のうちPEN廓清65例中PEN転移4例,PANまで廓清43例中PENのみ転移1例,PEN,PANともに転移2例,3点118例のうちPENまで廓清39例中PEN転移7例,PANまで廓清76例中PENのみ転移10例,PANのみ転移4例,PEN,PANともに転移7例,4点72例のうちPENまで廓清12例中PEN転移5例,PANまで廓清60例中PENのみ転移3例,PANのみ転移1例,PEN,PANともに転移21例と報告している.すなわちPAN転移35例中33例94.3%が3点と4点の症例であったことより,妥当な個別化基準と考えている.一方リンパ節廓清による副障害も患者にとって悩ましい問題であり避けられるものであれば避けたい.中山ら(2009年)はリンパ節廓清を行わなかった150例,骨盤リンパ節廓清まで行った186例,骨盤リンパ節廓清及び傍大動脈リンパ節廓清を行った144例を対象に副作用の出現につき検討している.イレウス発生頻度は順に1.3%,2.7%,9%,リンパ嚢胞発生頻度は順に0%,2.2%,11.8%,下肢浮腫発生頻度は0%,2.3%,2.1%であった.すなわちイレウス,リンパ嚢胞は廓清範囲を広げるほど出現頻度が多くなってきている.イレウスに対しては術後放射線治療を追加している症例で重篤化していることが多く現在は化学療法を後療法としている.より改善を目指して後腹膜の縫合方法,癒着防止剤の工夫も行っており提示したい.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
213-213, 2014
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