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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【ワークショップ2】
産科診療ガイドラインからみた常位胎盤早期剥離
濱田 洋実
筑波大学医学医療系産科婦人科学
常位胎盤早期剥離(早剥)は母児の転帰にきわめて大きな影響を与える,という事実を知らない産婦人科医はいない.その母児の予後を良くするべく多くの研究も行われてきた.にもかかわらず,わが国では毎日25〜30例の早剥が発生し続け,予後が良くなったという声は残念ながら聞かれない. こうした状況を少しでも打破すべく,産婦人科診療ガイドライン-産科編においては,「常位胎盤早期剥離の診断・管理は?」というCQ & Aが作成されている.早剥の効果的予防法が確立していない現在,早剥による母児の罹患率・死亡率減少のためには,1)早剥に関してハイリスクな妊婦を認識すること,2)できるだけ早く診断すること,3)診断後は適切に治療を行うこと,の3点が重要であるという考え方に基づき,2014年版では以下の8つのAnswerが設けられている. 1.妊娠高血圧症候群,早剝既往,子宮内感染(絨毛膜羊膜炎),外傷(交通事故など)は早剝危険因子なので注意する. 2.初期症状(出血/腹痛/胎動減少)に関する情報を30週頃までに妊婦へ提供する. 3.妊娠後半期に切迫早産様症状(性器出血,子宮収縮,下腹部痛)と同時に異常胎児心拍パターンを認めた時は早剝を疑い以下の検査を行う. ・超音波検査 ・血液検査(血小板,アンチトロンビン活性[以前のアンチトロンビンIII活性],FDPあるいはD-dimer,プロトロンビン時間,フィブリノゲン,AST/LDH,など) 4.腹部外傷では軽症であっても早剝を起こすことがあるので注意する.特に,子宮収縮を伴う場合,早剝発症率は上昇するので,胎児心拍数陣痛図による継続的な監視を行う. 5.早剝と診断した場合,母児の状況を考慮し,原則,早期に児を娩出する. 6.早剝を疑う血腫が観察されても胎児心拍数異常,子宮収縮,血腫増大傾向,凝固系異常出現・増悪のいずれもない場合,妊娠継続も考慮する. 7.母体にDICを認める場合は可及的速やかにDIC治療を開始する. 8.早剝による胎児死亡と診断した場合,DIC評価・治療を行いながら,施設のDIC対応能力や患者の状態等を考慮し,以下のいずれかの方法を採用する. ・オキシトシン等を用いた積極的経腟分娩促進 ・緊急帝王切開 本発表では,上記Answerに準じた早剥の診断と管理について概説する.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
215-215, 2014
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