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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【ワークショップ2】
常位胎盤早期剥離による母体死亡を防ぐために
竹田 善治, 安達 知子, 岡井 崇, 中林 正雄
総合母子保健センター愛育病院産婦人科
平成23年から24年に厚生労働省科学研究妊産婦死亡症例検討評価委員会で検討された母体死亡82例のうち,常位胎盤早期剥離(早剥)によるものは3例(3.7%)であった.母体の年齢は30代2例,40代1例,妊娠週数は30,37,40週,発症時刻は2時,12時,19時で,初発症状出現から心停止まで5時間,11時間,15時間であった.初産婦は1例,子宮内胎児死亡2例,帝王切開術(帝切)2例,母体死亡の原因は出血性ショック2例,高度の肺水腫に伴う呼吸不全1例であった.これら母体死亡となった3症例の概要を示す(個々の症例が特定されないように一部数値等を変えてある). 【症例1】外出血と下腹痛にて来院.分娩開始として待機中にNRFSとなり,早剥と診断し緊急帝切施行.術所見で子宮収縮はやや不良であったが縫合部からの出血は無かった.術中の血液検査はヘモグロビン8.8g/dL,血小板数9.0×104μLであった.輸血は行わず抗DIC療法を開始.術後急速に母体血圧低下.すぐに高次施設へ搬送依頼したが救急車内で心停止となった. 【症例2】下腹部痛と胎動感の減少にて来院.早剥による子宮内胎児死亡と診断した.経腟分娩方針とし1時間後に児娩出.分娩時出血量1,900ml.入院時に血液検査を行ったが,血小板数7.0×104μL,フィブリノゲン50mg/dL未満などの結果が判明したのは分娩後となり,結果判明後の輸血準備中に母体の心肺停止となった. 【症例3】胎動減少,下腹痛,外出血にて来院.早剥による子宮内胎児死亡と診断.DIC予防のため帝切とし,術中出血は羊水込みで2,000mlであったが,その後出血等はなかった.術後4時間の尿量は20mLと少なかったものの,血圧が安定していたため輸液と抗DIC療法で経過観察としたが,その1時間後に突然心停止となった. 上記3症例の経過を通して,早剥による母体死亡を防ぐための血液検査や母体バイタルサインの評価,輸血等の準備や実施のタイミングなどの具体的な方法について提言する.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
217-217, 2014
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