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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【スポンサードワークショップ】
産婦人科診療所において望まれる月経困難症・ 子宮内膜症治療とは
江夏 亜希子
四季レディースクリニック
現代女性の約80%に月経痛があり,月経痛で産婦人科を受診した人のうち約25%は子宮内膜症と診断される.子宮内膜症と診断されなくても,機能性月経困難症を放置すると将来的な子宮内膜症の発症リスクは2.6倍とされる.また,子宮内膜症患者の半数は不妊に悩むというデータもある.このように,初経が早く,初産が遅く,妊娠・出産の回数が減り,生涯に経験する排卵・月経の数が増えている現代女性にとっては,月経痛を適切に管理し,子宮内膜症発症を予防するマネジメントが非常に重要である. しかし,現状では多くの女性が月経痛を我慢したり,市販の鎮痛薬でしのいだりして,よほどの強い月経痛にならないと医療機関を受診しない.受診しても内科などで鎮痛薬を処方してもらい,そして,鎮痛薬が無効なほどの痛みになってようやく重い腰を上げて産婦人科を受診しているのが現状のようだ.内診等で明らかな器質的疾患が見られない場合,鎮痛薬の処方のみで診療が終了し,そのまま何年も受診せずに放置して,よりひどい痛みになってようやく受診する,という例も少なくない.これが「月経痛で受診したうちの1/4が子宮内膜症と診断される」という理由ではないだろうか.これを改善するためには産婦人科の「敷居の高さ」を解決しなければならない. 一方で,月経困難症は早期に治療を開始することで,子宮内膜症への進行を抑制できる可能性がある.月経困難症の治療薬として保険収載されている低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP製剤)や黄体ホルモン製剤により,長期に管理することもできるようになった.しかし,せっかくこれらのホルモン療法を開始しても,早期に脱落している例が多いことも明らかになってきた.2012年の日本医療情報センターのレセプトデータによる調査では,処方開始1ヶ月で27%,半年後には53%が治療から脱落しているという.この原因は初期の副作用への対策不足によるものと,疾患への理解不足によるものが主ではないかと考えている. 月経困難症,子宮内膜症は,妊娠・出産のタイミングなどのライフプランを踏まえながら閉経まで(卵巣チョコレート嚢胞の場合は悪性化も考慮して閉経後も)女性の一生を通じてマネジメントすべき疾患である.その上でキーパーソンとなるのは,月経痛のある女性が最初に受診する場所である産婦人科診療所の外来担当医ではないだろうか. 産婦人科診療所において月経痛・子宮内膜症の診断・治療を行う上で,何が望まれているのか.その問題点を挙げ,それに対する当院での取り組みについて報告する.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
221-221, 2014
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