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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))

【スポンサードワークショップ】
更年期からの健康管理:HRT導入と管理
―個人的な経験から―


岡野 浩哉
飯田橋レディースクリニック


 更年期医療とは更年期障害の治療だけを意味するものではない.更年期は,生活習慣病や各種退行期疾患,さらにメンタルヘルスにまで及ぶ病態・疾患の温床が形成される重要な時期である.オフィスギネコロジーという名のもとかかりつけ医としての役割が強調されているが,それには婦人科領域のみならず,他領域にも踏み込んだ広い知識と経験が必要となってくる.知識は紙面で勉強することができても,経験は日々の患者を通した診療でしか得ることができない.その意味において,私がこのような機会をいただいて話をすることは甚だ僭越で身に余ることであり大変恐縮している.しかし,開業し患者との距離が近い分,評価も直接的で逆に患者から間接的に指導される立場での診療経験は,現在の私にとってかけがえのない大きな財産となっている.
 更年期障害を疑い受診する女性に対し,傾聴が基本であることは異口同音であるが,話をよく聞いて時間をさくことが重要なのではなく,訴えを月経の状態や時間経過とともにしっかりと把握し,先入観はもたずに,症状の整理の手伝いをしながら問題点を抽出していく作業が,診断やその後の治療方針に必要不可欠な事だからである.当然ではあるが,医療に素人であり,不安を持って受診している患者が,順序良く理路整然と説明できるはずはないのである.また,治療に関しては,現在の健康状態を十全に検討し安全で有効な治療法を複数提示し,不安を煽るようなことはせず,症状と本人の希望から患者と医師とで治療法を選択し,それに対する事前のチェック項目を漏らさず行っていくことが必要となる.処方後も効果判定から変更も考慮し,治療中の副作用発現の監視を怠らず,患者のベネフィットとリスクを評価していく過程が肝要となる.これら過程は,更年期障害に限らない閉経後女性の健康管理にも配慮する姿勢となり,他領域への診断・治療にもつながり,真のかかりつけ医としての信用を少しずつ獲得していくことになると信じている.
 私自身が実践できているわけでは到底ないが,とかく時間がかかり面倒と思われがちなHRTを中心とした医療を展開している現時点での,試行錯誤からの矮小な経験の実際を,初診時の対応,検査,HRTの導入,中断または継続について,具体的に述べるご無礼をお許しいただきたい.たとえ賛同を得られない実践例としても逆に参考にしていただき,皆様の診療の一助となれば悪例もまた意義が生じ,さらにご討論ご批判から,勝手ではあるが私の今後の診療の糧にさせていただきたいと切に希望している.


関東連合産科婦人科学会誌, 51(2) 222-222, 2014


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