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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))

【日本産婦人科医会共催シンポジウム】
母体保護法と生命倫理(特に母体血を用いた
新型出生前診断をめぐって)


平原 史樹
横浜市立大学附属病院産婦人科


 診療にかかわる医師は高い見識と職業倫理が求められ,日本医師会からも倫理綱領が示されている.さらに母体保護法の医療を行う実施者として,また胎児を取り扱う医師としての視点からも,胎児の尊厳に留意し,胎児の持つ個々の多様性と独自性を尊重する姿勢で臨むことは重要なことといえよう.2013年4月から「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針」のもとに始まった母体血による胎児DNA出生前診断は私たち周産期医療の中で様々なことを改めて考えさせられる契機となった.そもそも出生前診断は何のためにあるのか?はたして人類に有益な,意義あるものなのか?先天異常とはなんだろう?生まれつき持ち合わせた遺伝情報,遺伝子異常を発症前に知る,出生前に診断することは何を私たちにどのような意味を示しているのであろうか?この先,科学が進むことで人類にもたらされるものは何であろうか?一方,日本医学会では「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」を2011年2月に発表し,日本産科婦人科学会の「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解」の遵守を謳っている.
 これらはいずれも幅広いゲノム遺伝子解析手法が発症前診断においてのみならず,出生前診断においても応用されることはもはや時間の問題に過ぎない状況となってきたことからの問題提起である.ゲノムの多様性や遺伝子の変化に基づく疾患・病態や遺伝型,さらにはその表現型を例外的なものとせず,すなわち人の多様性として理解し,その多様性と独自性を尊重する考え方を自らが十分に知り,理解するとともに社会,教育の中で醸成させることがより急務かつ重要な課題となっている.


関東連合産科婦人科学会誌, 51(2) 234-234, 2014


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