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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【若手ポスターセッション1】
静脈血栓症既往妊娠に対してフォンダパリヌクスの自己注射で管理した1例
小野 元紀1, 高津 亜希子1, 小林 愛子1, 大久保 奈緒1, 古川 哲平1, 田中 恭子1, 菊地 範彦1, 大平 哲史1, 金井 誠2, 塩沢 丹里1
信州大学医学部産婦人科1, 信州大学医学部保健学科2
「2004年肺血栓塞栓症/深部静脈血栓症予防ガイドライン」では,静脈血栓症既往妊婦に対し妊娠初期から未分画ヘパリンの投与が推奨されているが,アレルギー反応により投与継続が困難となる症例が報告されている.未分画ヘパリンと低分子ヘパリンにアレルギー反応を示し,薬剤選択に苦慮した肺血栓塞栓症既往症例を経験したので報告する.症例は32歳,1経妊1経産の女性で,前回妊娠では経腟分娩後に肺血栓塞栓症を発症し,6ヶ月間抗凝固療法を施行した.今回妊娠は他院で確認されたが,肺血栓塞栓症の既往のため,当院へ紹介となった.妊娠17週よりヘパリンカルシウム自己注射を開始した.妊娠21週(投与開始後4週間)頃より,両側大腿穿刺部位に広範囲に熱感,腫脹,圧痛を伴う浸潤性紅斑が出現した.皮膚科診察にてヘパリンカルシウムによる遅延型アレルギーが疑われたため,へパリンカルシウムを中止した.皮膚テストではエノキサパリンで遅延型アレルギーが疑われたが,フォンダパリヌクスではアレルギー反応を認めなかったため,当院の倫理委員会の承認を得た上で,患者,家族にインフォームドコンセントを行い,妊娠25週よりフォンダパリヌクス在宅皮下注射へ変更した.外来での経過中アレルギー反応や出血傾向等の副作用は認めなかった.妊娠39週0日に陣痛発来し,同日経腟分娩となった.児は3,698gの男児で,特に異常は認めなかった.分娩時出血量は225gであった.フォンダパリヌクスは陣痛発来後中止し,分娩翌日より再開し産褥6週間まで継続した.ヘパリンアレルギー等で薬剤変更が必要になった場合には,フォンダパリヌクスも有効な治療の選択肢となりうると考える.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
241-241, 2014
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