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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【若手ポスターセッション2】
子宮脱に対する長期ペッサリー挿入後に発生した腟癌の1例
秋野 なな, 松本 陽子, 有本 貴英, 江口 聡子, 冨尾 賢介, 鶴賀 哲史, 足立 克之, 長阪 一憲, 織田 克利, 川名 敬, 藤井 知行
東京大学産婦人科
原発性腟癌は婦人科悪性腫瘍の1〜2%と稀な疾患である.骨盤臓器脱に対し長期ペッサリー挿入中の腟癌発生例を経験した.72歳女性,1経産,53歳閉経,間質性肺炎に対してPSL20mg長期内服中.骨盤臓器脱に対して60歳時より前医でペッサリー挿入.71歳時の子宮頸癌検診でHSILがみられ当院に紹介されたが,コルポスコピー,子宮頸部組織診で異常なく,HPV陰性で4ヶ月後の再診とした.4か月後に不正出血のため前医を再診.ペッサリー抜去時に右腟壁に高度なびらんを認めたが,頸部細胞診は正常であった.翌月,不正出血が1週間持続し当院再診.腟壁の出血に対し,縫合止血を行った.2ヶ月後,前回びらん部に一致して,右腟壁に径4cmの腫瘤が認められた.組織診にて腟扁平上皮癌と診断された.腫瘍は右腟壁から骨盤壁に達し,CTにて多発肝転移,骨盤・傍大動脈・左鎖骨上の多発リンパ節転移を認め,腟癌stage4b(T3N1M1)と診断した.SCCが19.9ng/mlと高値を認めた.Paclitaxel,Carboplatin併用療法を施行したが2コース後のCTで腫瘍の増大に加え,多発肺転移出現.ドキシフルリジン800mg/day内服に変更したが6週間後のCTで,原発巣,転移巣ともに増大したため,Therapy offとなり1ヶ月後に原病死した.腟癌発生のリスク因子としてHPV感染,免疫低下状態の他,ペッサリーの長期使用を含めた慢性的な腟壁刺激がある.腟癌患者のペッサリー使用は10〜19%に及び,使用開始から腟癌診断までの期間の中央値は18年と報告されている.ペッサリーは簡便性に優れているが,腟内の炎症や瘻孔形成,癒着に加え,悪性腫瘍の誘因となりうることも念頭においた管理が必要と考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
242-242, 2014
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