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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【一般演題口演】
ヘパリンカルシウム皮下注射の一過性トランスアミナーゼの上昇について
井上 慶子, 井澤 朋子, 渡部 耕平, 黒田 恵子, 宮崎 典子, 松島 実穂, 長内 喜代乃, 和地 祐一, 酒井 啓治, 岩下 光利
杏林大学医学部付属病院産婦人科
平成24年度1月より血栓性素因を有する不育症の妊婦に対してもヘパリンカルシウムの在宅自己注射が保険適用となった.それに伴い産婦人科領域でもヘパリンカルシウムの在宅自己注射を行う患者数が増加している.当院においてもヘパリンカルシウムの在宅自己注射を導入しておりその管理方法・副作用について報告する.症例は平成23年12月から平成25年12月までにヘパリンカルシウムの在宅自己注射を開始した10例で,疾患は不育症8例,深部静脈血栓症2例である.不育症の症例は子宮内に胎嚢を確認後,2日間の入院管理とし副作用に対する注意や自己注射実技などの教育を行った後に開始した.深部静脈血栓症の症例は,未分画ヘパリンの持続投与を開始しその後ヘパリンカルシウム在宅自己注射に移行した.不育症症例はヘパリン1万単位/日,深部静脈血栓症は1.8〜2万単位/日投与した.ヘパリン起因性血小板減少症やアナフィラキシー症状,出血などの重大な副作用は認めなかった.しかし,10例中6例に一過性のトランスアミナーゼ上昇を認めた.上昇を認めた6例中5例はヘパリンカルシウム開始後,数日から2週間以内にトランスアミナーゼが上昇したが使用を継続しても1か月以内に正常範囲にまで低下した.残る1例は開始後3週目よりトランスアミナーゼが上昇し2か月後に正常範囲に低下した.最もトランスアミナーゼが上昇した症例でもAST 92IU/ml,ALT 184IU/mlであった.ヘパリンカルシウムによるトランスアミナーゼ上昇は一過性で,使用を継続しても2か月以内に正常範囲に低下した.しかし,その機序は不明であり経過観察は必要と思われる.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
279-279, 2014
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