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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【一般演題口演】
胎児縦隔嚢胞性病変を認め,出生後気管支原性嚢胞と診断された1例
紀 宏志, 高木 紀美代, 叶谷 愛弓, 吉新 明日香, 品川 光子, 吉田 志朗
長野県立こども病院産科
【はじめに】気管支原性嚢胞(bronchogenic cyst)は気管支形成前に胚芽組織から生じる未熟な前腸が遺残した結果生じ,食道重複嚢胞や神経腸管嚢胞などの縦隔腫瘍との鑑別が困難である.今回我々は胎児縦隔嚢胞性病変で鑑別診断に苦慮した症例を経験したので報告する.【症例】32歳女性,0経妊0経産,妊娠35週6日の妊婦健診時に胎児の縦隔内に嚢胞性病変を指摘された.胎児MRIで気管支嚢胞や食道重複嚢胞が疑われたが,確定診断が困難であり,当科に紹介受診となった.胎児胸部の四腔断面像で左心房の背面に接して,1.7×1.2×2.2cmの嚢胞性病変を認めた.嚢胞壁は肥厚はなく嚢胞内部はlow echoで血流は認めなかった.内部に隔壁の存在を疑う所見があり,観察中に内部液体の流出像が確認された.妊娠40週2日で陣痛発来し,経膣分娩となった.出生時体重2811g,女児,アプガースコア9/10,UApH7.30.出生後の精査でも気管支原性嚢胞と食道重複嚢胞の鑑別診断が困難で,日齢20に開胸手術を施行,嚢胞全摘出となった.術中所見および摘出物の病理診断により気管支原性嚢胞(bronchogenic cyst)と確定された.【考察】気管支原性嚢胞,食道重複嚢胞など胎児の縦隔嚢胞性病変は出生前の鑑別診断が困難で,出生後も確定診断が容易ではない.嚢胞内での感染や出血,嚢胞増大による気道閉塞,心臓の拡張障害など隣接臓器への影響を含む合併症が起る可能性があるため,出生後の外科的治療に対応可能な高次医療機関での周産期管理が望ましい.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
286-286, 2014
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