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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【一般演題口演】
妊娠30週での卵巣皮様嚢腫の破裂に対し,腹腔鏡補助下に治療し妊娠継続が可能だった1例
堀澤 信, 園田 正樹, 吉川 美登利, 森田 政義, 山本 かおり, 布施谷 千穂, 本藤 徹
長野赤十字病院産婦人科
【緒言】皮様嚢腫は,卵巣腫瘍の約20%を占め,自然破裂の頻度は1%未満と考えられているが,妊娠時にはその頻度は増加する.今回我々は,妊娠30週での皮様嚢腫破裂に対し,腹腔鏡補助下に治療を行い満期まで妊娠継続し,選択的帝王切開を行った症例を経験したので報告する.【症例】36歳,2経妊1経産.タイ人,既往帝王切開後妊娠.妊娠30週3日に腹痛と子宮収縮頻回のため前医を受診し,切迫早産の診断でリトドリン117μg/min投与下に当院へ母体搬送された.体温38.1度.腹部全体に強い圧痛を認めた.内診所見:子宮口閉鎖,ダグラス窩に強い圧痛あり.経腟超音波:子宮頸管長は40mm,卵巣腫瘍は指摘できなかった.胎児は第1骨盤位で推定体重1680g.NST:RFS.来院時の白血球17400/m3,CRP 1.96mg/dl.子宮内感染を疑い,アンピシリン4g/dayを開始したが,翌日症状,炎症所見ともに増悪していたため,造影CTを撮影し,右卵巣皮様嚢腫破裂と診断した.同日,腹腔鏡補助下右卵巣腫瘍核出術,腹腔内洗浄を行った.術後11日間リトドリン投与を要したが,術後経過は良好で子宮頸管長の短縮も認めず,術後12日目に退院とした.妊娠38週3日に既往帝王切開後妊娠の適応で選択的帝王切開を行った.帝王切開時,右付属器は正常所見であり,周囲に軽度の肉芽形成を認めたものの,腹腔内に癒着を認めなかった.【考察】妊娠中の皮様嚢腫の破裂は,胎児への影響を考慮して診断が遅れることがある.早期に確実に診断することで早産を回避することは非常に重要であり,急性腹症に対しては妊娠中であってもCTやMRIなどの画像検査を行うべきである.また,妊娠初期に卵巣腫瘍を的確に診断し,治療を行うことが重要である.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
291-291, 2014
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