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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【一般演題口演】
腹腔鏡下卵巣腫瘍摘出術を施行し病理組織診断で4mm大のカルチノイドを認めた1症例
前林 亜紀1, 永石 匡司1, 山本 範子1, 菅野 光1, 山本 樹生1, 絹川 典子2
駿河台日本大学病院産婦人科1, 駿河台日本大学病院病理2
カルチノイドは元来消化管粘膜など全身諸臓器に分布する末梢性内分泌細胞由来の腫瘍である.卵巣カルチノイドは,卵巣腫瘍の0.1%以下,全カルチノイドの約1.3%とされ,稀である.今回,卵巣成熟奇形腫摘出術施行後に,病理組織検査にて発見された卵巣カルチノイドの1例を経験したので報告する.症例は36歳,0経妊0経産.前医で右側の卵巣腫瘍を指摘され,セカンドオピニオン目的に当院初診となった.初診時,経腟超音波検査で左付属器領域に53×45mm大,右付属器領域に50×38mm大の多房性嚢胞性腫瘤を認めた.左卵巣奇形腫,右卵巣子宮内膜症性嚢胞と診断し,術前に子宮内膜症に対してホルモン療法(GnRHアナログ)後,手術を施行した.術式は腹腔鏡下両側卵巣嚢腫摘出術,子宮筋腫核出術,手術時間は2時間45分,出血量は少量であった.病理組織診断は,Insular carcinoid tumor associated with mature cystic teratoma in ovary,left.免疫染色はchromogranin(+),CD56(+),synaptophysin(+)であった.術後診断は卵巣カルチノイド(境界悪性腫瘍)Ia期であり,追加治療はせず,現在外来にて経過観察を行っている.卵巣カルチノイドは境界悪性群に属し,ほとんどの症例は卵巣に限局したI期であり,腫瘍摘出にて治癒するとされている.しかし,稀ではあるが再発死亡例もあるため,長期にわたる管理が必要と考える.今回のようにカルチノイド部分が小さい症例では,術前の画像診断,術中の肉眼的所見からの診断は極めて難しい.術前奇形腫の診断であっても,術中に腹水細胞診を行うことや腫瘍内容物の漏出をなくすこと,また迅速病理診断や術式の慎重な検討などが必要と考えた.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
293-293, 2014
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