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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【一般演題口演】
境界悪性腫瘍が子宮内膜症性卵巣嚢胞切片中に存在した1症例
小野 政徳, 吉浜 智子, 西島 翔太, 天方 朋子, 櫻井 友義, 落合 大吾, 池田 俊之, 矢久保 和美, 福井谷 達郎
さいたま市立病院産婦人科
【緒言】子宮内膜症性卵巣嚢胞は,悪性を含む多様な卵巣腫瘍との鑑別が必要であること,破裂や感染を来たしやすいこと,病変自体や手術が卵巣機能に直結することなど取扱いには注意を要する.腹腔鏡下手術は侵襲が少なく,短期入院,早期社会復帰など開腹術に比べ多くの利点があり,近年適応症例が増加傾向にある.一方で卵巣腫瘍において術前に良悪性を完全に診断することは不可能であり,また卵巣癌における病理学的な検討で子宮内膜症性卵巣嚢胞自体が卵巣癌の発生母地となっている可能性も注目されている.今回我々は子宮内膜症に対して子宮内膜症除去術を施行し,卵巣嚢胞切片中に境界悪性腫瘍が存在した症例を経験したので報告する.【症例】30歳,1回経妊1回経産.[既往歴]前置胎盤で帝王切開術の既往あり.[現病歴]月経困難症,慢性骨盤痛で当院紹介となった.初診時,両側子宮内膜症性嚢胞を認め,ジェノゲストによる薬物療法を開始した.1年間の薬物療法にても症状改善せず,インフォームド・コンセントを得た上で子宮内膜症除去術を施行した.左子宮内膜症性卵巣嚢胞切片中に境界悪性腫瘍(Mucinous cystic tumor,borderline malignancy)が存在した.妊孕性温存の希望あり,初回術後2か月目に左付属器切除,右卵巣部分切除術を施行したところ左卵巣に遺残病変を認めた.現在,外来経過観察中である.【結語】卵巣癌と子宮内膜症性卵巣嚢胞では,分子生物学的解析によりloss of heterozygosity(LOH),PTEN,p53,ARID1A等の共通のmutationが存在することが報告されている.子宮内膜症性卵巣嚢胞の取扱いは比較的若年者でも悪性卵巣腫瘍の可能性を念頭に慎重に取り扱う事が必要である.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
297-297, 2014
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