|
<< 学会誌へ戻る
<< 前のページへ戻る
第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【一般演題口演】
子宮筋腫によるPseudo-Meigs症候群において,術前の胸腹水コントロールが著効した1例
中村 永信, 宮本 純孝, 小松 央憲, 須藤 亜紀子, 村田 知美, 安藤 昭彦
さいたま赤十字病院産婦人科
Pseudo-Meigs症候群とは,卵巣線維腫瘍以外の腹腔内腫瘍によって,胸腹水の貯留をきたし,原因腫瘍の摘出後に速やかに胸腹水が消失するものと定義される.今回,糖尿病性腎症による低蛋白血症を合併し,変性子宮筋腫によるPseudo-Meigs症候群を来たした症例に対して,術前に胸腹水の除水を行い周術期に合併症なく経過した一例を経験したので報告する.症例は59歳女性,2経妊2経産,閉経53歳.既往に2型糖尿病があり,1年前より内服加療中.一か月で15kgの体重増加,全身浮腫を主訴に近医を受診した際に,腹腔内占拠性病変及び大量の胸腹水貯留を認め,精査加療目的に当科を紹介受診した.血液検査でCA125値が822.9と高値であり,骨盤部MRI,腹部エコー上,子宮底部に長径18cm大の充実性病変と大量の腹水貯留を認め,卵巣癌あるいは子宮肉腫を疑った.しかし,胸腹水細胞診では悪性所見は認めず,胸腹部CTでは転移所見を認めず,診断・治療を兼ねて手術の方針となった.しかし,大量胸腹水による低酸素血症及び拘束性肺障害を認め,周術期の呼吸障害の増悪,循環動態の悪化が懸念されたため,腹水濾過濃縮再静注法(CART)を行い,除水及び低蛋白血症の是正を図った.著明に胸腹水は減少し,CART後11日目に単純子宮全摘+両側附属器切除を行った.病理結果は変性子宮筋腫であり,術後は胸腹水の再貯留,及び有意な合併症を認めず経過し,術後13日に退院となった.本症例は,当初は悪性腫瘍に伴う胸腹水貯留を疑ったが,結果として変性子宮筋腫によるpseudo-Meigs症候群であった.Meigs症候群において,術前のCARTによる胸腹水コントロールが周術期合併症を軽減し予後の改善に繋がる可能性があると考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
300-300, 2014
|