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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【一般演題口演】
Trousseau症候群を呈した子宮体部原発腺肉腫の1例
松浦 拓人1, 大塚 伊佐夫1, 遠見 才希子1, 末光 徳匡1, 高橋 健太1, 寺岡 香里1, 今井 一章1, 高矢 寿光1, 田中 亜由子1, 古澤 嘉明1, 清水 幸子1, 久保田 俊郎2
亀田総合病院産婦人科1, 東京医科歯科大学周産・女性診療科2
子宮腺肉腫はミューラー管型の良性上皮と悪性の所見を示す間質成分からなる混合腫瘍をいい,その頻度は子宮肉腫の8%と比較的稀な腫瘍である.今回我々は,壊死性筋腫分娩と診断した直後,Trousseau症候群の一症状として多発脳梗塞を来した子宮腺肉腫の一例を経験したので報告する.症例は59歳女性,閉経55歳,20XX年X月,不正出血を主訴に前医を受診した.粘膜下筋腫の所見を認め,内膜細胞診は陰性であり,経過観察となったがX+3月に症状増悪し再診した際には筋腫分娩の状態となっており当院へ紹介となった.待機的な手術を計画したものの,初診直後に軽度の右上下肢部分麻痺,構音障害,健忘性失語が出現した.約1週間後の定期受診時の頭部MRIで左前頭葉を主とした多発脳梗塞を認め直ちに血栓性塞栓症を疑い抗凝固療法を開始した.初診時の組織生検結果は壊死が大半を占め,壊死性筋腫と診断,筋腫分娩の状況から抗凝固療法に伴う不正出血増多も懸念されることから初診後約2週間が経過した時点で腹式単純子宮全摘出術および両側付属器摘出術を施行した.術後病理組織結果は術前の生検とは異なり,子宮体部原発腺肉腫の診断であった.また,血栓性素因を含めた原因検索を行うも,明らかな原因は特定できず,腺肉腫を合併したことから悪性腫瘍に伴う凝固亢進状態から心原性塞栓症を発症し,多発脳梗塞を来したTrousseau症候群と考えられた.現在,抗凝固療法を継続しつつ,無再発で経過観察している.腺肉腫は子宮内膜より発生した場合,本症例のように内腔へ突出し,増大が顕著であることから腟空内へ脱出し,不正出血を来し受診の契機となることがあるが,凝固亢進状態が増悪した機序は不明である.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
306-306, 2014
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