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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【一般演題口演】
甲状腺成分に癌化を認めた卵巣成熟奇形腫の1例
石川 玲奈, 杉浦 賢, 稲垣 萌美, 寺西 絵梨, 垣本 壮一郎, 大沼 えみ, 永田 亮, 納田 容子, 野村 可之, 松永 竜也, 小林 有紀, 津浦 幸夫
横須賀共済病院産婦人科
奇形腫は2,3胚葉由来の組織からなる腫瘍で,若年女性の卵巣に好発する.今回成熟奇形腫の甲状腺成分にのみ癌化を認めた症例を経験したため,報告する. 症例:65歳,3経妊3経産,心窩部痛を主訴に前医外科受診.腹部単純CTにより6.5cm大の骨盤内腫瘍を指摘され,前医婦人科紹介.卵巣癌疑いにて,精査加療目的に当院紹介.超音波上ダグラス窩に59×51mm大の腫瘤性病変あり.採血上CA19-9が218.9U/mlに上昇.MRIにて子宮右側に74×46×57mmの充実成分を伴う嚢胞性腫瘍認めた.卵巣癌疑い,右付属器切除術施行.術中の迅速診断は卵巣甲状腺腫で良悪性の判断は確定に至らず.左付属器切除と単純子宮全摘術を追加して終了した.永久病理標本では甲状腺濾胞の増成所見を主とし,皮膚や分化した腺上皮を含む成熟奇形腫が背景にみられた.甲状腺濾胞上皮の一部で浸潤性発育あり,悪性と診断された.洗浄腹水は変性を伴う腺様異型細胞含み悪性否定できず.左卵巣及び子宮には異常所見なし.卵巣癌1a期(T1aN0M0)Follicular carcinoma derived from mature cystic teratoma(malignant transformation of struma ovarii)として初回治療終了.現在フォロー中,再発所見なし. 卵巣成熟奇形腫の悪性転化は2%程度の頻度で起こるとされているが,大半は扁平上皮癌であり,腺癌の症例はまれである.本症例では甲状腺成分のみに癌化を認めた.卵巣成熟奇形腫が甲状腺へ分化後に悪性転化したことが示唆される.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
307-307, 2014
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