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第127回学術集会(平成26年6月21日(土),22日(日))
【一般演題口演】
卵巣原発腹膜偽粘液腫の2例
笠井 章代, 川畑 絢子, 津田 明奈, 廣瀬 宗, 中島 恵子, 高橋 一彰, 上田 和, 斎藤 元章, 矢内原 臨, 高倉 聡, 山田 恭輔, 岡本 愛光
東京慈恵会医科大学産婦人科
【緒言】腹膜偽粘液腫は,粘液産生腫瘍の破綻ないしは腹膜播種により,腹腔内にゼリー状の粘液が広範囲に貯留する病態の総称である.原発巣の多くは虫垂で,卵巣原発例は稀である.病理学的には低悪性度であっても,手術による粘液の完全除去は困難で,標準治療も確立されていないため,臨床的に悪性の経過をたどることがある.今回,当院で経験した卵巣原発腹膜偽粘液腫の2例を報告する.【症例1】65歳,腹部膨満感を主訴に来院し,画像上30cm大の右卵巣腫瘍と大量腹水を認めた.開腹手術を施行したところ,右付属器に多房性嚢胞性腫瘍を認め,粘液が充満した腫瘍は自然破綻し,骨盤内から横隔膜下まで広範囲に粘液貯留と腹膜播種巣がみられ腹膜偽粘液腫であった.腹腔内を低分子デキストランで洗浄し,腹膜切除術を施行した.病理組織診断は成熟嚢胞性奇形腫を伴う卵巣粘液性境界悪性腫瘍で,虫垂に腫瘍性病変を認めなかった.術後10ヶ月が経過するが,再発を認めていない.【症例2】52歳,乳癌術前に腹部CTで左卵巣腫瘍と腹水貯留を指摘された.開腹手術を施行したところ,左付属器に粘液性の多房性嚢胞性腫瘍を認め,骨盤腹膜に粘液が付着し腹膜偽粘液腫であった.病理組織診断は卵巣粘液性腺癌と甲状腺性カルチノイドであった.術後化学療法を施行中であるが,再発なく経過している.【考察】当院では過去10年で6例の腹膜偽粘液腫を経験した.粘液性卵巣腫瘍に対して手術療法を施行し腹膜偽粘液腫の診断に至った症例の病理組織診断,治療,転帰をまとめ,腹膜偽粘液腫の術前診断,根治性の高い手術および薬物療法,組織学的悪性度と予後について,文献的考察を加えて報告する.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(2)
308-308, 2014
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