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第128回学術集会(平成26年10月25日(土),26日(日))

【特別講演2】
産科医療補償制度―原因分析から学ぶこと


岡井 崇1,2
総合母子保健センター愛育病院院長1, 産科医療補償制度原因分析委員会委員長2


 産科医療補償制度は2009年に運用が開始され,2013年12月現在687件が補償対象と認定されている.その内,原因分析が完了した事例は319件である.  これらの内,原因分析委員会で「脳性麻痺発症の主たる原因」が解明された事例は233件で,86件は「原因が明らかでない,または特定困難」と判断されている.主たる原因とされた病態で頻度の高いものを列挙すると,常位胎盤早期剥離:74件,臍帯脱出:15件,その他の臍帯因子:34件,子宮破裂:10件,胎盤機能不全・低下:7件,感染:8件,胎児母体間輸血症候群:9件などが挙げられる.これら以外に「複数の原因」と判断される56件に関連した病態は,常位胎盤早期剥離:9件,臍帯脱出以外の臍帯因子:30件,胎盤機能不全・低下:12件,絨毛膜羊膜炎またはその他の感染:20件,児の頭蓋内出血5件,胎児発育不全:6件などであった.  以上より,分娩に関わり発症したと考えられる脳性麻痺であってもその原因は実に多岐に亘ることが見て取れる.中でも多い病態は,常位胎盤早期剥離と臍帯因子,感染,子宮破裂,胎盤機能不全,胎児母体間輸血症候群などであり,これらのより詳細な病態解明,発症の予知と予防,早期診断と迅速な対応などに関しての研究を促進することの重要性が示されたと言える.  次に出生時の児の状態を評価してみると,脳性麻痺が急性の分娩中の出来事によると判定する基準とされている“臍帯動脈血pH<7.00,アプガースコア(5分後)7点未満”を満たさない事例が相当数存在することが明らかとなった.pH値が7.0以上の事例92件のうち,33件(35.9%)が原因が明らかでないまたは特定困難であり,複数の原因が考えられる事例が28件(30.4%)を占めていた.同様に5分後アプガースコアが7点以上の事例47件のうち,23件(49.0%)が原因不明事例で6件(12.8%)が複数原因であった.  以上のことから,これまでの分析で原因不明とされた事例や複数の因子が関与した事例では,常位胎盤早期剥離などの典型的な産科異常による脳性麻痺とは異なった視点からその発症メカニズムを探求していく必要のあることが窺われた.  また,脳性麻痺事例の胎児心拍数波形を集積・解析出来たことにより,脳性麻痺となった児の心拍数波形の推移が把握でき,一方で,胎児の健常性に関して誤った判断が下され易い波形も抽出されつつある.これらの新しい知見に基づき,我々は胎児心拍数についての理解を深め,産婦人科医師が自らの診療能力を向上させると共に,より質の高い産科医療の提供に繋げてゆかなければならない.


関東連合産科婦人科学会誌, 51(3) 351-351, 2014


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