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第128回学術集会(平成26年10月25日(土),26日(日))
【ワークショップ1―私たちはこうしている―】
子宮頸癌IIB期の新たな戦略
重粒子線治療の可能性
若月 優, 柴 慎太郎, 唐澤 久美子, 鎌田 正
放射線医学総合研究所重粒子医科学センター病院
近年,子宮頸癌IIB期に対する根治的な放射線治療は,同時併用化学放射線治療や画像誘導小線源治療の導入により,治療成績の改善が認められている.しかしながら,依然として,5,6cmを越えるような巨大腫瘍や放射線感受性が低いとされる腺癌に対しては十分な局所制御が得られていない.そこで当院では1995年から通常の化学放射線治療では制御困難と考えられる巨大かつ高度浸潤性の腫瘍,および放射線抵抗性の腺癌を対象に重粒子線治療の臨床試験を開始している.2014年3月までに8つの臨床試験が施行され,200例以上の患者に対して重粒子線治療が行われた.そのうち6つの臨床試験は既に終了し,2つが進行中である.これらの臨床試験は扁平上皮癌・腺癌に分かれて施行されており,適格条件は,@生検(組織診)で証明された子宮頸部の扁平上皮癌または腺癌・腺扁平上皮癌,AFIGO臨床病期II-IVA期,B手術・化学療法などの前治療歴のないもの,CCTにて傍大動脈リンパ節転移を認めない,D病巣の状態,高齢,合併症などの理由で手術不適あるいは手術拒否例であること等となっている.
臨床試験はまず局所制御率の向上を目的に局所に対する線量増加試験が行われた.その結果,線量の増加とともに局所制御率の向上が得られた.特に70 GyE以上の線量が照射された症例の局所制御率は,扁平上皮癌,腺癌ともに良好であり,原発巣の制御には70 GyE以上の線量が必要であることが示唆された.一方,有害事象としては,当初の臨床試験から十分に安全性を確認しつつ線量増加試験として行われてきたが,2001年までに治療された68症例中に8例(11.8%)で腸管穿孔が出現し,救済手術が行われた.これらの症例の腸管に照射された線量を解析した結果,重粒子線治療における腸管の耐容線量が明らかとなり,それに基づいて様々な治療方法の改善がなされた.その結果,2002年以降に臨床試験として重粒子線治療単独にて治療された約130症例では1例も重篤な腸管障害は出現していない.
子宮頸癌に対する重粒子線治療は,治療方法の工夫を行うことにより,安全な治療方法が確立されてきている.一方,対象となる症例は局所進展の強い巨大腫瘍であっても良好な局所制御効果が得られるようになってきている.現在は,さらなる局所制御率の向上と遠隔転移の抑制を目指して,化学療法併用重粒子線治療の臨床試験を施行しており,今後その結果が期待される.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(3)
368-368, 2014
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