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<< 学会誌へ戻る 鼠径ヘルニアは女性の3％に発症するとされ，小児外科では主要な疾患である．今回，鼠径ヘルニア手術既往のある女性で，切迫早産入院中であった方が，下腹部の急激な疼痛を認め，帝王切開によるterminationとした症例を経験したため報告する．患者は29歳，0回経産，既往歴として1歳時に開腹で右鼠径ヘルニア手術を行っており，ヘルニア嚢に卵巣が癒着していたものを押し戻し，縫合閉鎖したとのことであった．妊娠32週5日，頻繁な子宮収縮と子宮頸管長短縮を認め，入院とした．塩酸リトドリン50μg/minを開始し，しばらく状態は落ち着いていた．妊娠33週6日，就寝時に突然，右鼠径部から下腹部にかけて強い疼痛を認めた．塩酸リトドリンを徐々に増量し，尿管結石等を疑って検査を行うも，診断が確定できなかった．炎症反応はWBC 9000/μ，CRP 0.47mg/dLであった．疼痛の部位から右鼠径ヘルニアの手術部位に子宮円靱帯が巻き込まれ，子宮収縮に伴って疼痛を誘発していると考えた．妊娠継続の強い希望があり，児の状態に異常を認めなかったため，塩酸リトドリン200μg/min，硫酸マグネシウム1.6g/hrまで増量した．また，硬膜外カテーテルを挿入し除痛を図った．妊娠34週3日，下腹部痛，子宮収縮の増強を認め，腰椎麻酔下に帝王切開術を施行した．右円靱帯が短縮し，同部位に右卵巣，卵管が捻転し癒着していた．癒着を剥離し，円靱帯を切断，結紮した．児は2324g，Apger Score1点（1分)/3点（5分），早産，新生児仮死にてNICU入院となった．右下腹部痛は術後速やかに軽快した．鼠径ヘルニア術後の合併症としてこのような状況が起こり得ることを念頭に置くべきと考えられた． 関東連合産科婦人科学会誌, 51(3) 386-386, 2014 |
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