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<< 学会誌へ戻る 卵巣成熟嚢胞性奇形腫由来と考えられた若年発症の腹膜偽粘液腫の1例を経験した．現在，腹膜偽粘液腫のほとんどは虫垂由来と考えられており，卵巣成熟嚢胞性奇形腫からの発生は極めて稀であることから，文献的考察とともに報告する．症例は20歳未経妊，腹痛を主訴に近医を受診し，卵巣腫瘍の疑いで当院紹介となった．画像上，20cm大に腫大した左卵巣は，成熟嚢胞性奇形腫を中心に，粘液性腫瘍の特徴を呈する多房性嚢胞性腫瘤を形成し，内部に小嚢胞構造の集簇や，壁・隔壁の造影効果を認め，被膜破綻および腹腔内播種像を伴っていた．CA125 136.9，CA19-9 262.2，CEA 21.0，SCC 8.5．開腹すると，左卵巣は一部破綻して，腹腔内に多量の粘液性物質が充満し，腸間膜の肥厚や播種様結節を認めた．左付属器摘出，右卵巣腫瘍摘出，大網部分切除，虫垂切除を施行．腹膜に付着した粘液は可能な限り除去した．病理診断の結果，左卵巣は粘液性境界悪性腫瘍で，内部に成熟嚢胞性奇形腫を認めた．術前MRIで多数の嚢胞で粘液成分に脂肪成分が共存していたことや，免疫染色で下部消化管パターン（CK20陽性，CK7陰性（ごく一部陽性））を示したことから，成熟嚢胞性奇形腫の腸上皮成分由来の腹膜偽粘液種と考えた．詳細な検索を行ったが，明らかな浸潤像は認めなかった．卵巣以外の摘出標本ならびに腹水には明らかな腫瘍細胞は認められず，Ic（a）期と診断した．病理学的に虫垂に異常はなく，上部・下部消化管内視鏡検査でも異常を認めなかったため，消化管原発腫瘍からの転移性腫瘍は否定的である．術後化学療法の有効性は明らかではないことから，後療法は行わず厳重に経過観察中である． 関東連合産科婦人科学会誌, 51(3) 399-399, 2014 |
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