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第128回学術集会(平成26年10月25日(土),26日(日))
【若手ポスターセッション7】
診断・治療に苦慮した卵巣悪性甲状腺腫の1例
片倉 和香子1, 黒田 浩1, 横溝 陵1, 岩田 侑子1, 白石 絵莉子1, 野口 大斗1, 井上 桃子1, 竹中 将貴1, 飯倉 絵里1, 田中 邦治1, 礒西 成治1, 岡本 愛光2
東京慈恵会医科大学附属第三病院産婦人科1, 東京慈恵会医科大学附属病院産婦人科2
卵巣悪性甲状腺腫は卵巣甲状腺腫のわずか5%にあたり,非常に稀な疾患である.症例は65歳,2経妊2経産,51歳閉経.半年前より右下腹部痛を自覚,頻尿と少量の不正性器出血を認めたため当科受診となった.内診上,腫瘤は新生児頭大,可動性不良であった.経腟超音波検査では骨盤内を占拠する不整充実性腫瘍を認めた.腹部造影CT検査では充実性腫瘍に右卵巣との連続性が疑われ,病変は右付属器由来と推定された.骨盤MR画像検査では約125mm大の腸管に癒着する嚢胞成分と充実成分の混在する腫瘤を認めた.腫瘍マーカーはいずれも陰性で,子宮腟部および子宮頸部の細胞診はNILM,子宮内膜の細胞診はClassI,子宮内膜組織診は明らかな異常を認めなかった.以上の所見より術前診断は困難であり,骨盤内悪性腫瘍として開腹手術を施行した.開腹時,子宮および左卵管を確認し,腫瘤からの血管走行から右卵巣由来の腫瘍と診断した.しかし,腸管,後腹膜,腹部大動脈との癒着が高度であったため,大量出血の高リスクを考慮し,右付属器摘出術を施行した.5cm以上の残存腫瘍を確認し,腫瘍減量術にとどめた.術後の病理組織診断はMalignant spindle cell tumor with struma ovarii(免疫染色:thyroglobulin一部陽性),pT3c Nx M0,Figo Stage IIIcであった.胚細胞性腫瘍の悪性例と考え,術後化学療法として,BEP療法(シスプラチン,エトポシド,ブレオマイシン)を2コース施行した.残存腫瘍は縮小を認めているが,副作用としてGradeIVの好中球減少が出現したため,抗がん剤を減量し加療を継続している.極めて稀な腫瘍であるが,その発生を考慮した病理診断に基づいた化学療法が功を奏した一例と考えられる.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(3)
405-405, 2014
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