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第128回学術集会(平成26年10月25日(土),26日(日))
【優秀演題賞候補】
血栓性微小血管障害症の関与が示唆された産褥期急性腎不全の1例
田中 恒成, 落合 大吾, 宮越 敬, 佐藤 卓, 中村 加奈子, 仙波 宏史, 福武 麻里絵, 松本 直, 峰岸 一宏, 田中 守, 青木 大輔
慶應義塾大学産婦人科
【緒言】血栓性微小血管障害症(Thrombotic microangiopathy:TMA)は血小板減少と溶血性貧血,および微小血管の血小板血栓による腎障害などの臓器障害を合併する症候群である.TMAの代表的疾患として血栓性血小板減少症と溶血性尿毒症症候群が知られる.今回我々は,HELLP症候群を契機に発症した急性腎不全の1例を経験した.HELLP症候群とその他の妊娠関連TMAとの鑑別も含め,若干の文献的考察とともに報告する.【症例】33歳,0経妊0経産.妊娠30週5日,重症妊娠高血圧腎症にて母体搬送で来院.来院時,高血圧,頭痛,右上腹部痛,嘔吐,視覚障害を認め緊急帝王切開を施行した.術後,肝逸脱酵素上昇,血小板低下,LDH上昇,ビリルビン上昇を認め産褥HELLP症候群と診断した.肝逸脱酵素は術後1日目(LDH 6522 U/L,AST 2573 U/L,ALT 1047 U/L),血小板は2日目(3.4×103/μl)をピークに改善傾向となったが,無尿持続のため術後2日目に血液透析を開始した.連日透析を行なうも無尿は持続し,血清クレアチニン値は7.18 mg/dlまで上昇し,末梢血中に破砕赤血球の出現を認めた.肝逸脱酵素・血小板の回復と,溶血所見・腎障害の遷延との間に乖離を認めたことからTMAを考慮し新鮮凍結血漿投与を開始したところ,腎機能は改善傾向に転じ,術後13日目に透析を離脱し24日目に軽快退院となった.【考察】本症例の肝逸脱酵素・血小板数の回復はHELLP症候群として典型的であったが,腎不全と溶血の遷延は非典型的でTMAを疑った.一般にHELLP症候群は速やかな妊娠終了と適切な支持療法により短期間で軽快する事が多い.しかし,臓器障害が遷延した際はその他の妊娠関連TMAとの関連を考慮することが重要であると考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(3)
418-418, 2014
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