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第128回学術集会(平成26年10月25日(土),26日(日))
【一般演題口演】
妊娠25週に発症し,PCPSを用いた集学的治療により救命し得た肺血栓塞栓症の一例
中嶋 理恵, 菅野 秀俊, 楢山 知明, 成田 篤哉, 佐藤 茂, 三塚 加奈子, 東郷 敦子, 西村 修, 石本 人士, 和泉 俊一郎, 三上 幹男
東海大学医学部専門診療学系産婦人科
【緒言】妊娠中は,血液凝固系が亢進し血流うっ滞もきたしやすく,静脈血栓塞栓症が発症しやすい状態にある.母体死亡につながる急性肺血栓塞栓症(PTE)の発症率は非妊時に比べて約4倍と報告されている.今回我々は妊娠25週に発症したPTEに対し,PCPS(percutaneous cardio-pulmonary support)を用いた集学的治療により母児ともに救命しえた一例を経験したので報告する.【症例】34歳,0経妊0経産.妊娠25週2日,胸痛を主訴に前医を受診した.心臓超音波検査にてPTEが疑われ当院に母体搬送となった.来院時,意識は清明,収縮期血圧50mmHg,脈拍120/分,呼吸は頻呼吸,100%酸素投与下でもSpO285%とショック状態であった.心電図検査で右室負荷所見,心臓超音波検査では著明な左室圧排像を認めたため,緊急造影CT検査を施行しPTEと診断した.この時点では静脈血栓はすでに認められなかった.胎児徐脈を認めたが,まず母体救命を優先しPCPSを導入してICU管理となった.ヘパリンによる抗凝固療法を含む集学的管理により血行動態の改善が得られ,第6病日にはPCPSを離脱した.第7病日,超音波検査にて右浅大腿静脈から膝窩静脈にかけて静脈血栓の新たな形成を認めたため,PTE予防目的で,下大静脈フィルターを挿入した.その後血栓が著明に縮小したため,第42病日に下大静脈フィルターを抜去した.血液検査ではプロテインS活性が26%(妊娠時正常値42から68%)と低下を認めた.妊娠33週の時点で母体に特記すべき症状はなく,胎児発育も良好である.【結語】PTEは病状の進行が速く,重篤な経過をたどる事も多い.妊婦の症状や全身所見から早期に診断し,果断に集学的治療を開始することが重要と考えられた.
関東連合産科婦人科学会誌, 51(3)
421-421, 2014
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